現代の職場では、「情報の透明性」が重要だとよくいわれる。皆が同じ情報にアクセスできることで、働く環境の「心理的安全性」も高まる。ただ、情報の透明性を高めようとした結果、逆に不信感を生み、うまくその環境を生かしきれないケースも少なくない。何が問題なのか、考えてみよう。(山田進太郎D&I財団 COO 石倉秀明)
「何でも共有」が生む“負の影響”
情報の透明性を高めすぎるリスクとは?
SlackやTeamsといったオンラインのコミュニケーションツールを業務で使うことが当たり前になってきている。メールやFAX、電話が基本手段だった時代に比べ、明らかに社内でのコミュニケーションは取りやすくなっているし、コミュニケーションの頻度は上がっているだろう。
その一方で、リモートワークが導入されたり、フレックスタイムで働く人も増え、以前に比べて情報共有が難しくなっていることを実感している読者も多いのではないだろうか。
そういった時代にマネジメントをする上で、「情報の透明性が大事」「情報の非対称性があることはよくない」といった話を聞くことが増えてきている。つまり、以前に比べて、階層や役職に関係なく皆が同じ情報を持つべきであるという考え方が主流になりつつある。
情報の透明性が高くなれば、皆が同じ情報を共有できているので、会議などでも意見が出やすかったり、何を言っても大丈夫と思える「心理的安全性」が担保しやすくなるといわれている。また「知らないうちに大事なことが決まっていた」という状況を減らすことで、モチベーションを下げたり、不信感を生む要因をなくすことにもつながる。
いずれにしても
・クローズドな場ではなく、オープンな場で議論する
・口頭で合意した内容でもチャットツールや情報共有ツールで適宜共有する
・情報共有ツールを活用し、誰でも必要な情報にアクセス可能な状況にする
などを行うことで、情報の非対称性や不公平感を減らすことは重要だ。
情報の透明性が高まれば、誰でも必要な情報にアクセスできるので、何度も同じことを言わなくて済む、不信感が生まれにくい、新しく入ってきた人も過去の経緯を含めて知れるのですぐに活躍してもらえる――など、メリットは非常に大きい。さまざまなツールを使ってコミュニケーションを取る現代の働き方において、情報の透明性を確保することは必須事項と言っても過言ではない。
しかし、過度に情報の透明性を高めようとした結果、逆に不信感を生み、モチベーションを下げるケースも存在する。このような現象は「透明性の負の影響」として知られている。今回は、事例をもとにその要因を2つ紹介する。