公園で勉強する男の子写真はイメージです Photo:PIXTA

中学受験塾として圧倒的な合格実績を誇り、“王者”の異名を持つSAPIX。その草創期から長年にわたって指導してきた広野雅明氏に「中学受験の素朴な疑問」をぶつけてみた。第3回(全12回)では「中学受験で成功する子の共通点」に話が及んだ。(聞き手・文/教育アドバイザー 鳥居りんこ)

1日10時間も勉強する
“サピっ子”が楽しそうなワケ

――以前、東大生たちにインタビューをしたことがあるのですが、「中学受験のほうが東大受験よりも勉強した」「今までの人生で一番勉強していた」と答えてくれた人が少なくなかったんです。そのとき、調べた彼らの大学受験の1日の勉強時間は8時間から14時間という数字だったので、小学生のころからそんなにやっていたのかと驚きました。中学受験反対派の中には、この長時間の勉強時間を良しとしない向きもあります。

 中学受験の勉強時間が人生の中で一番多かったとしても、単純に楽しいからって部分もあると思います。

 私は今も6年生の授業を担当していますが、受験を控えた6年生も、テスト演習のとき以外はかなり盛り上がります。授業が楽しいという声はかなりあります。まだ子どもですから、楽しくなかったらそんなにたくさんは勉強できないですよ。

 塾でみんなと一緒に勉強するから楽しいんです。6年生の入試直前期の1月は自宅でオンライン受講してもいいし、塾に来てもいいというシステムですが、それでも、多くの子が塾に来て対面で参加していました。

――子どもたちの関係性ってどんな感じなのですか?やっぱりライバル?

 ライバルですが、この子を蹴落として自分だけが合格するっていうわけではないですね。高め合うライバルです。「みんなで一緒に合格しよう!」という感じですから、連帯感や友情を感じます。

――同じ目標に向かって走る者どうしの連帯感を感じるから、塾が楽しいということでしょうか?

 いや、もっと単純だと思います。2年前の子どもたちですが、授業の前に教室に行くと、みんなでワイワイしているんですね。何かと思ったら「ハイ、これから、このクラスの条例づくりをします。この案件に賛成の人は挙手してください」ってやっているんですよ。子どもたちを見ていると、それが楽しいらしくて、それでそういう遊びをしているんですね。
 
 他にも地図帳を見たら、この地名を誰が最初に見つけられるかとか。ちょっと前ですが、安倍総理の次は誰が総理になるべきかというのを皆で話し合っていたこともありました。もちろん、全員が言い出すわけじゃないですよ。でも、そういうことを言ったとしても浮かないんです。そういう遊びって、たぶん公立の小学校だと難しいと思うんですよ。

 学校では自分の地を出せないけど、塾では地を出しても大丈夫なんだっていう安心感ですかね。ややもすれば、地元の小学校では自分から「勉強が好きだ!」とか「算数が得意!」と言ったら浮いてしまいますよね。でも、塾ではフルスロットルで自分の得意分野の頭脳を目いっぱい出したとしても、それが逆に尊敬されますね。

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