報道によれば、買収金額は日本円で3億円とされている。大宮が抱える負債も引き継ぐ形となるため、実際にレッドブル社が投じる金額は3億円よりもさらに高くなる可能性が大きい。それでも日本サッカー界で静岡県、広島県と並ぶ御三家と呼ばれるなど、サッカーが盛んな埼玉県にはまだまだポテンシャルが眠り、なおかつ大宮はさいたま市西区内に天然芝1.5面、地上3階建てのクラブハウスがある練習場も保有。下部組織と女子チームも持っている点で、 アジアでネットワークの一翼を担えると判断された。

 大宮はどのように受け止めているのか。全株式を譲渡した後も大宮のパートナー企業に名を連ねる、NTT東日本の渋谷直樹代表取締役社長も、同じ共同声明でこう綴っている。

「レッドブルの皆さまからは日本のサッカーにかける熱い情熱を感じました。我々よりもスポーツチームの運営経験が豊富であり、大宮アルディージャのファンや伝統を大切にしながら素晴らしい歴史をつくっていってくれることを確信しました」

ファンやパートナー企業も
好意的に受け取める背景

 大宮の歴史は前身である電電関東サッカー部が創部された1969年に幕を開けた。親会社の民営化に伴ってNTT関東サッカー部へ改名された1985年を経て、プロ化を決定し、誘致された埼玉県大宮市(当時)に本拠地を移した1998年に大宮アルディージャへ再び改名。翌年からJ2に加盟した。

 2005年からはJ1へ戦いの場を移し、先述したように2016年はクラブ史上で最高位となる5位でフィニッシュ。しかし、翌2017年に最下位でJ2へ降格してからはJ1への復帰がかなわず、逆に2020年以降は順位も15位、16位、19位と推移。昨シーズンは21位でついにJ3へ降格した。

 昨シーズンの最終戦だった東京ヴェルディ戦では、ホームのNACK5スタジアム大宮でファン・サポーターが「NTT様 弱さよりも強くなる情熱が感じられないことに失望しています」や、あるいは「俺たちは情熱、信念のある経営者と共に戦いたい」といった横断幕を掲げて親会社のNTT東日本を非難した。

 Jリーグが開示している経営情報の一項目である売上高で、昨シーズンの大宮は27億8800万円を計上した。J2を戦った22クラブでは清水エスパルス、ジュビロ磐田、FC町田ゼルビア、ヴェルディに及ばない数字であり、J1の18クラブで大宮を下回ったのは24億9700万円のサガン鳥栖だけだった。