すべてが反映されるわけではないものの、それでもクラブの強さは売上原価の大部分を占めるトップチームの人件費に比例する。大宮の場合、J3リーグを戦っている今シーズンは売上高がさらに減少している可能性もある。こうした状況もあって、大宮の買収はポジティブに受け止められている。

 買収の正式発表を受けて、大宮のパートナー企業に名を連ねる株式会社清美が、X(旧ツイッター)上で開設したサッカー専用アカウントに投稿した言葉が、それを象徴していると言っていい。

「大宮アルディージャで強くなれれば1番良かったですが、それが出来ずにJ3まで落ちてしまい、NTTの決断とレッドブルへの譲渡。色々と変わってしまう事も多いと思いますが、生まれ変わる新生大宮アルディージャに期待し応援し続けます」(原文ママ)

 レッドブル社による買収で、クラブが生まれ変わった例としてライプツィヒが挙げられる。2009年の買収時にドイツ国内の5部に相当するリーグで戦っていたライプツィヒは、7シーズンでブンデスリーガ1部へ初昇格。今では上位陣の常連として、優勝を狙えるクラブの一つに名を連ねている。

大宮はJ2への昇格なるか?
プロスポーツ界が注目するその行方

 大宮とともにアジアで待望の第一歩を踏み出すレッドブル社は、ホームタウンは引き続きさいたま市、クラブ名やクラブカラーを尊重、地元出身選手や指導者の育成への投資、ドイツなど世界各国で経営しているプロチームとのネットワークを活用する、といったコミットメントをすでに発表している。

 さらに先述のミンツラフ氏は、新体制の発足直前にドイツのサッカー専門誌「キッカー」の取材に応じ、新生・大宮の今後に関して、ライプツィヒがたどってきた軌跡を踏襲したいと語っている。

「日本はものすごく興味深い市場だ。さらに我々のクラブ(大宮)はJ2に昇格する可能性が高い。それからは引き続き、ライプツィヒを成功に導いたアプローチでJ1昇格に努めていくつもりだ」

 残り8試合となったJ3戦線で、大宮は2位のFC今治に勝ち点16 ポイント差をつけて首位を独走し、J2へ自動昇格できる上位2位以内でのフィニッシュへ着々と近づいている。1年でのJ2復帰から本格的にスタートする、外国資本レッドブル傘下での新たな挑戦へ。大宮が刻んでいく前例のない軌跡を、資金不足に悩む他のJクラブ、さらに他のプロスポーツ界もさまざまな視線を介して注目している。