さらにJリーグは2020年に、今度は規約を改正。クラブの発行株式の過半数を国内企業が保有するように義務づけていた項目を撤廃し、外資企業が日本法人を設立しなくてもクラブを買収できる状況を整えた。成長戦略が見直されたなかで、外国資本を柱の一つとして本格的に迎え入れるためだった。

 外国資本の参入が全面解禁されてからも、ホームタウンの反対などもあってなかなか実現には至らなかった。外資企業の意向次第で、地元のクラブや地域全体が振り回される、といった懸念もあった中で初めて名乗りをあげたのが、世界177カ国でエナジードリンク販売事業を展開し、昨年のグループ売上高が105億5400万ユーロ、日本円にして約1兆6800 億円に達したレッドブル社だった。

 同社は欧米を中心に、スポーツマーケティングに積極的に取り組んできた。F1をはじめとするモータースポーツに加えて、スケートボードやスノーボード、高所から海へ飛び込むクリフダイビングなど、若い世代に高い人気のある、いわゆるエクストリームスポーツの支援にも力を注いできた。

なぜレッドブルはアジアの
J3チームに目を向けたのか

 もちろんサッカーも例外ではない。オーストリアの強豪レッドブル・ザルツブルクをはじめ、ドイツ・ブンデスリーガ1部のRBライプツィヒ、米メジャーリーグサッカーのニューヨーク・レッドブルズ、ブラジルのレッドブル・ブラガンチーノなどを経営。世界中でネットワークを構築している。

 その一環として、同社にとって未踏の大陸だったアジアへ目を向けたのは自然の流れだった。韓国なども候補にあがった中で、最終的には円安が続いている日本のJリーグ、その中でもクラブが創設されて四半世紀以上の歴史があり、J1で5位に食い込んだ実績を持つ大宮に絞り込まれた。

 レッドブル社の代表、オリバー・ミンツラフ氏は共同声明のでこう綴っている。

「アジアにもクラブを持つことができ、戦略的に重要な地域で私たちのサッカーポートフォリオを拡大できることを大変嬉しく思っています。日本サッカー界は近年、非常に順調に発展しており、数多くのトップタレントを輩出しています。私たちはクラブと共にこの成功の道の一部となり、経験と専門知識を提供して、将来的には大宮を日本サッカー界において名門クラブの一つにするために貢献したいと考えています」