帳簿書類は何年までさかのぼって調べるのか?

 さて、いよいよ「実地調査」のために調査官が自宅にやって来た。初日には、調査開始前に調査官から「身分証明書」「質問検査章」が提示される。これは、法律で定められた質問検査権に基づく税務調査であることの証明である。調査は、2~3日かけて行われるのが一般的だ。

 調査官は、基本的に事前通知で示した内容以外の調査はできない。例えば、提示された調査対象期間よりも前の帳簿書類の開示を求める場合、なぜその帳簿書類の開示が必要なのか、その理由を納税者に説明する必要がある。典型的な追加閲覧の理由は、誤りの発見だ。

 国税局職員出身の税理士によれば、「個人の所得税調査では、通常、3年さかのぼって帳簿書類の確認を受けるが、誤りが発見された場合は、4年以前も、さらに同様の誤りが想定されると、5年前までさかのぼって調査されることがある。悪質な脱税が疑われる場合は、7年前までさかのぼって調査される」ということだ。

 帳簿書類の閲覧要請を断ることは可能なのだろうか。よく聞かれる質問なのだが、基本的には、納税者には受忍義務があるため「正当な理由」がない限り拒否することはできない。実は、正当な理由のない拒否、虚偽の帳簿書類の提示・提出には、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則規定もある。

 ちなみに、拒否できる「正当な理由」とは何だろうか。国税庁は、原則的には個々の事案別に具体的に判断する必要があるが、「帳簿書類などが災害などで滅失・毀損し、直ちに提示・提出することが物理的に困難であるような場合が考えられる。最終的には裁判所が判断する」という見解を示している。