調査終了「三つのパターン」

 実地調査は調査通知に始まり、最終的に次の三つの法的手続きのいずれかによって終了する。

1 申告内容に誤りなし(=是認)

 実地調査の終了時に、特に問題点が見つからなければその旨が伝えられる。この場合は「是認」されたと理解してよい。誤りがあったとしても、調査官の判断によって、「悪質でなく」「初めて(=過去の申告に同じ誤りがない)」「税額が過少」であるなど、総合的に判断して「指導に留(とど)める」とされれば、実質的に是認と考えてよく、税務的な処罰はない。

 是認されると、時間を置いて税務署から「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」(『是認通知書』と呼ばれるもの)が書面で送られてくる。記載内容は、「税目」「更正決定等をすべきと認められない課税期間等」「調査対象期間」で、原則として、その後同じ税目および期間に再調査が行われることはない。

2 修正申告

 申告内容に誤り(過少申告、もしくは還付金が多かった場合)が認められた場合や、申告義務がありながら申告していなかったことが判明した場合は、「修正申告」が必要となる。調査官から、税目、課税期間、納税すべき額など、およびその理由が、原則口頭(場合によっては、資料などを提示)で伝えられる。同時に、納付すべき税額および加算税(※3)のほか、納付すべき税額によっては延滞税が生じる旨の説明がある。

 修正申告に際しては、「修正申告または期限後申告の勧奨」が行われる。わが国の税制は納税者による申告納税を基本とするため、支払う税額を税務署が決める「更正または決定」(後述)に優先するという考えによるものだ。

3 更正または決定

 納税者が修正申告または期限後申告の勧奨に応じない場合に、税務署長が「更正または決定」の処分を行い、理由が記載された通知書を送付する。「更正」は、税務署が申告税額が少ないと判断し、申告額以上の税金の支払いを指定するもの。「決定」は、申告の必要があるにもかかわらず申告がなかった場合に、税務署が支払うべき税額を指定する処分である。

 以上が、個人の税務調査の大まかな流れだ。コロナ禍が明けて、税務調査件数は増加傾向にある。税務調査は、単に申告内容が正しいのか疑問点を確認するだけの甘いものではない。「法律の規定に基づき、納税義務者の課税標準や税額等を認定する目的、その他、法律に基づく処分や更正の決定を行う目的」で行われるもの(※4)だからだ。

 調査官が丁寧に接してきても、基本的には、非違(誤り)を見つけに来ていることを前提に考えておく必要がある。税務調査は、来年の確定申告までは厳しい調査が実施される。一時的な所得が増えたことに覚えがあれば、調査が入ることも視野に入れて自分なりに準備をしておこう。

※3 加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし(国税庁、PDFページ)
※4「調査」の意義(国税通則法の法令解釈通達)