しかし、経営者が頑張ったところで、そもそもの事業領域を刷新することは超の付く難問である。長期的な成長期待事業を持たないとすれば、経営者の頑張りによる業績の好転があったとしても、天井は低い。

 日本市場において適切でない理由はいくつかある。

「経営者の頑張り」への期待は、ほぼアメリカ市場に限定される。これまでの日本で経営者のクビが飛ぶことはまずなかった。クビを飛ばす手段としての企業買収も少なかった。

書影『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
川北英隆 著

 現在、日本にも変化が訪れようとしているが、その変化は徐々にしか起きないだろう。

 また、バリュー株の定義であるPBRについて、ファーマらが実証分析を行ったアメリカ市場においては、実はPBR1倍割れの企業はまれである。

 つまりPBRが低いといっても、PBR1倍割れ企業のように、その企業の経営が資本コスト割れの状態にあると投資家が評価しているわけでない。

「相対的に経営がよろしくない」だけである。

 日本の市場においてPBRの低い企業を選んだとすれば、PBR1倍割れ企業だらけになり、しかもその中には「絶対的に経営がよろしくない」企業が多数含まれるだろう。経営に問題の多い企業を長期運用の対象にすれば、高い投資収益率を期待するのはほぼ無理である。