初めて社会に出る新卒の学生にとって、「会社・職業選び」はとっつきにくいかもしれない。この連載では、業界をけん引する企業がどんな事業を強化しているのか、どんな人材を求めているのかを分かりやすく解説していく。第2回では「医薬品業界」に焦点を当てる。企業分析のプロに、業界における最新トレンドや企業が求める人材像について聞いた。(ダイヤモンド・ライフ編集部 大根田康介)
新薬開発はハイリスク
医療費抑制の逆風にさらされる
日本の国内医療用医薬品市場は、2015年から10兆円超で推移していたが、23年に11兆2806億円となり、過去最高を更新した。まさに活況を呈している業界だ。
医薬品業界では、バイオロジーや化学、工学など幅広い科学知識が求められる。特許による知的財産の保護も重要なため、知財の知識も必要だ。そうした理由により、理系の人材が重視されてきた。
一方で、医師や薬剤師に情報提供をする営業職であるMR(医薬品情報担当者)は、文系の人でも目指せる職種として多く採用されてきた。しかし、近年はインターネットやデジタルツールを活用した情報提供が増え、従来の営業活動の重要性が低下している。
新薬は最初に開発されたものが安全性の面で圧倒的に有利で、後発薬(ジェネリック医薬品)で売り上げを伸ばすことは難しくなっている。かつては営業で後発薬がシェアを奪うことができたが、技術の進化により新薬の完成度が高まったため、巻き返しが難しくなっているのだ。
こうした状況でMRのリストラが進んでおり、10年前に6万人以上いたMRは、2023年度には約4万7000人に減少した。
さらに、以前はゼネラリストを育てる傾向が強かった医薬品業界も、現在は新薬開発が最優先課題となっており、専門知識を持つスペシャリストの採用が増えている。
かつては、外資系メーカーでは転職によるキャリアアップ、日本メーカーでは1社でのキャリアアップが一般的だったが、最近では日本でも労働市場の流動化が進んでおり、この傾向は今後も続くと予想されている。
そんな医薬品業界について、改めて業界の構造や仕事内容、採用状況などをおさらいする。また、就職してスピード出世するために学生のうちから準備すべきこと、採用面接で聞かれることや業界が求める人材など、就活生に役立つ情報も伝授する。