投資家の井村俊哉氏は2022年に地方銀行の大株主となったものの、政策保有株を巡る地銀経営陣の対応に失望し、地銀の株を全て売却。その後、金融庁に制度改革を訴えている。インタビュー後編では、井村氏が不誠実だと指摘する「政策株の隠蔽(いんぺい)行為」と、それを防ぐ方策について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
純投資悪玉論に異を唱える地銀も出現
投資家・井村俊哉氏の反論は?
――純投資への移管によって政策保有株を隠す行為をきっかけに、全株売却したとのことでした。最近では金融庁を訪問し、政策株から純投資への移管について制度改革を訴えていますが、一方で地銀側の言い分も耳にします。政策株として保有するよりも、発行体から将来の売却についての応諾を得た上で純投資に移管すれば、不測の事態に備えていつでも自由に株を売却できるバッファーとしての役割が高まるという考えです。
先日、金融庁の政策株の担当者と意見交換をした時に、ちょうどその話題になりました。
地銀には万が一に備えてバッファーに使いたいという言い分がありますが、「万が一のときに株を売れるのだろうか」とその担当者は言っていました。仮に災害時など株価が大きく下がっているときに株を売れるのかといえば、現実的にはなかなか売れない。私は、万が一のときのバッファーは、株の含み益とは別の手段で持った方がいいのではないかと考えています。
――他にも、政策株の中で配当利回りが高い銘柄は、運用対象として持ち続けた方が株主にとって得だという地銀側の主張もあります。実際、国内の長期金利は依然として0.9%前後です。貸出金利よりも高い配当利回りの銘柄は即座に売却するのではなく、純投資に移管して利益を得た方が、株主還元も積極的にできるのではないでしょうか。
純投資を巡る地銀側の主張に対し、井村氏は「政策株を純投資に移管してまで保有し続ける意義はほとんどない」と反論する。次ページではその理由に加え、地銀による政策株の「隠蔽行為」を防ぐための具体的な方策について打ち明ける。