政策保有株式縮減の流れは、地方銀行にも波及している。そこで上場地銀全73行を対象に、投資家が見るべき時価ベースの「政策保有株式」純資産比ランキング2024を作成した。すると、縮減をアピールしている地銀も、純資産に占める時価ベースの政策保有株式の割合は、依然として投資家が満足する水準に至っていないことが分かった。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
政策株は流動性の低さがリスクに
連結純資産比が高い地銀は?
本連載第1回では、2024年6月に開催された地銀全頭取の株主賛成率ランキングを作成した。その結果、選任議案の対象となった76人の頭取のうち、6割超に当たる49人の賛成率が前年より悪化したことが判明している。(『地銀全頭取「株主賛成率ワースト」ランキング【全76行】ワースト3位滋賀銀行、2位東和銀行、1位は?』)
頭取の株主賛成率を上下させる要因の一つが、政策保有株式の割合だ。
投資家から見た地銀の政策保有株式の問題点について、ありあけキャピタルの田中克典代表はガバナンス上の理由に加え、銀行経営におけるリスクの高さを指摘する。「政策保有株式はすぐに売却できず流動性が低いため、株価の下落局面でも保有し続けるほかない。純資産に占める流動性のない株式の割合が高いほど、銀行経営上のリスクも高まることが問題だ」(田中代表)
実際、機関投資家は議決権行使の基準の一つとして、政策保有株式の連結純資産比を用いる。機関投資家が参考にしている議決権行使助言会社の方針では、この比率を20%以上に設定しているケースが多い。つまり20%を上回る地銀の取締役は、問答無用で反対を推奨されるのだ。
そこで、2024年の有価証券報告書や統合報告書を基に「政策保有株式」純資産比ランキング2024を作成した。政策保有株式の定義は、議決権行使助言会社ISSの基準に沿って「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の貸借対照表計上額(非上場株式を含む)と「みなし保有株式」の合計額としている。
ランキングの対象とした上場地銀全73行のうち、政策保有株式の連結純資産比が20%以上だった銀行は31行、同50%以上は6行が該当した。50%以上だった6行はその妥当性について、今後も機関投資家から厳しく追及されることになるだろう。
次ページで、73行の政策保有株式(時価ベース)の純資産に占める割合を一挙公開する。