石破首相の「法人税引き上げ」主張はなぜおかしいのか?むしろ「一律引き下げ」が正しいワケ【エコノミストが解説】Photo:AP/Eugene Hoshiko/Pool/Anadolu/gettyimages

石破茂政権は、法人税引き上げ、金融所得課税など、ビジネスに友好的でない、いわば「反ビジネス」「嫌ビジネス」の気味がある。首相に就任後、これらの主張を封印してしまったようだが、気質は残っている。企業の内部留保に課税せよとか法人税に累進課税を導入せよという言論もある。しかし、内部留保とは、現金として残っているものではなく、すでに設備投資などに使っているものである。企業の保有する現金などの金融資産なら課税できるかもしれないが、このような余裕資金がなければ、リーマンショックやコロナショックのような時には一挙に倒産企業が増えてしまうだろう。そもそも法人税や金融所得税を引き上げれば、企業はそれだけ余計に税金を払ってくれるものだろうか。税率を上げて税金を増やすのはそれほど簡単ではないということを、中小企業と大企業の法人税の払い方から考えてみたい。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

企業利益の多くは
大企業が稼いでいる

 結論を話す前に、まずは中小企業と大企業の利益について見ていこう。図1は、財務省「法人企業統計調査(年次調査)」より、総税引前の利益を企業規模ごとに見たものである。

 図から明らかなように、利益の多くは大企業が生み出している。2022年度で、資本金10億円以上の企業の利益は61.9兆円で、すべての階級の企業の利益98.3兆円に対するシェアは63.0%になる。