そこに加えて、中国に在留する邦人や日系企業を危険に晒してしまう。深センの日本人学校に通う児童が刺殺されたような事件が誘発される場合もある。安倍元首相が靖国参拝した後に起きた大規模な「反日デモ」なども起きて、店や会社が襲撃されることもある。帝国データバンクの調査では、中国に現地法人や生産拠点などを有する日本企業の数は約1万3000社に上っており、約10万人の邦人が暮らしているのだ。

 このような自国民の安全、経済的損失を総合的に勘案した結果、高市首相のまわりにいる「仲間」たちが「今回は参拝は我慢してもらえないですか」と説得に入る可能性は高いのではないかと思っている。

 こういう近未来が見えると、石破政権も高市政権もどっちもどっちだ。今は足の引っ張り合いなどせず、石破首相の下で経済の立て直しなど山積みの課題に取り組んでくれたほうが、国民の利益につながるような気もするが、今の「倒閣」ムードからしてそれも難しそうだ。

 泥沼の内戦状態に突入した自民党はどうなっていくのか注目したい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

石破首相の“手のひら返し”に失望する人には想像もつかない「首相の行動原理」とは?