「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。
歳をとっても親と仲良くいられる人の考え方
親とのコミュニケーションで「最重要」と言っていいくらい大切なのが、「子ども自身が親の『看取者(かんしゅしゃ)』になりきり、振る舞う」ことです。
親子関係における看取者とは、自分が「歳をとった親をケアする立場の人間だ」という自覚を持ったうえで、相手の状況を観察し、適切な対処・コミュニケーションに努める人のことを指します。
看取者は、親の言葉に過敏に反応して、感情をぶつけることはしません。口論や争いの火種をつくり、親子関係をこじらせるだけだからです。
たとえば、親と外食に行った際に、親がごはんをほとんど残したとします。そのとき「なんでも残さず食べなきゃダメじゃない。ちゃんと食べてよ」などと、感情に任せて注意するのは望ましくありません。
なぜなら、人間は老化とともに、食べられる量が減るからです。「思っていたよりもお腹に入らない」といったことは少なくありません。「昔はモリモリ食べていた」というイメージを持っているかもしれませんが、老化とともに「適切な食事量」に落ち着くこともあります。家で軽く食事をしてきて、お腹がいっぱいの可能性もあります。
子ども自身が「看取者」としての自覚を持ち、「歳をとった親は、昔の親とは違うんだ」と認識していれば、こういった可能性があることに気づくようになるでしょう。もちろん、心配ならば「なぜ、ごはんを残すのか」を確認してみてください。
いずれにせよ、一歩引いたところから、親の様子を観察し、適切な対処・コミュニケーションに努めることが「看取者になる」ことの本質です。「どうしたら親をいい方向に導けるのか」という視点でコミュニケーションを取ってください。
看取者になれると「親は歳をとった。ケアが必要なのだから、わがままも仕方ないよね」と、寛容な心が育まれてきます。それがコミュニケーション上のストレスを減らします。相手を受け入れる余裕が生まれると、親との時間が今以上に居心地のいいものになるはずです。