「そんなお金、ない」と諦めている方もいます。しかし、50代の平均所得額のピークは年間758万5000円で、40代の696万円より60万円あまり増加しています。確かに子どもの学費や仕送りも多い年代ではありますが、支出は月34万8025円と、40代の月32万3660円と比べて2万5000円程度しか増えていません。年間でも増加額は30万円ほどです。これまで貯金できなかった人でも、増加分の所得から増加した支出額を引くと年間30万円あまりも残ります。この分を老後の資金に回せるはずなのです。

 将来のことを漠然と不安に感じながらも手を打てない人もいますが、実際、年金だけで生活できている人は4割のみ(令和5年 国民生活基礎調査の概況)です。他方、「生活が苦しい」と6割が回答していて、これから先、二極化が進むことが懸念されます。世論調査(2023年11月)では、「全面的に公的年金に頼る」という人は26%しかいません。つまり、年金だけで生活できる人はどんどん減っていく懸念があります。

国の年金に身を任せていても
幸せな老後は訪れない

 残念ながら一般的に、50代の年収がこれから急に増えることは期待できず、また今さら国に任せていても、公的年金が増えることを期待するのは難しいでしょう。

 国の年金を信用できない人も多いですが、老後の準備が万端かどうかで、将来の幸福度にも影響が出ます。やはり、年金額が十分だと精神的にも安定し、幸福度は上がります。幸福度は、年金額が高い企業年金加入者が最も高く、次に厚生年金加入者、さらに国民年金加入者の順になっており、国民年金の未納、未加入者は納付者よりも幸福度が低くなっています。年金の受給額を低く予想している人も、幸福度が低いことがわかっています。将来の年金額が低いと悲観してしまうのです。

 これから年金額を増やす準備を始めることが、その分、精神的にも安定する一歩になるのです。

 世論調査では、公的年金だけに依存できない場合、多くの人が「公的年金を中心に個人年金や貯蓄を行う」(53%)、「公的年金より、できるだけ個人年金や貯蓄などを中心にする」(17%)と回答しています。具体的には、「預貯金」が圧倒的に多く67%を占めていて、「退職金や企業年金」(32%)、「NISA」(20%)、「私的個人年金」(14%)(少数点以下切り捨て)と続きます。

 では、いったいどんな手段を選べばいいのでしょうか。