――そこからよい流れに乗った、と。
塩田 ただ、ヨシ原を持続的に守り続けるには、もうかる産業として確立しなければならない、と痛感しました。ヨシの草抜き一つとってもボランティアを活用していたのですが、これでは持続しません。
ヨシを扱えばもうかるとわかれば、商売にする人がヨシ原を管理し、草抜きなどをするようになります。大学でデザインを学んだ娘から「デザイナーはモノだけでなく、社会の仕組みを含めてデザインすることが大切」という話を聞いたことも刺激になり、産業として成り立つ仕組み作りに挑戦し始めました。
――具体的にはどんなことを?
塩田 まずは「ヨシ糸」の事業化です。ヨシ繊維を糸にして量産すれば商品開発の可能性が広がります。
20年に綿を混紡したヨシ糸の開発に成功した竹繊維研究所とライセンス契約を結び、コロナ期の事業再構築補助金を活用して、21年に自社で小さな繊維製造工場を立ち上げました。
ただ、自分たちで工場を営んだことで大量生産は弊社には難しいとわかり、24年から日本新聞インキさんに引き継いでいただきました。営業パートナーも見つかり、弊社はデザイン・商品開発に専念する分業体制ができつつあります。
一方、淀川だけでなく全国のヨシの保全と、地域活性化を図る組織として、23年に一般社団法人ヨシオープンイノベーション協議会を設立しました。
今ではこの団体が中心になって刈り取りをしています。24年2月には東京からも複数の大手企業が参加してくださいました。京都信用金庫さんには本協議会設立前から2年ほどご参加いただいています。
――着実に仕組みが出来上がってきていますね。今後の抱負をお聞かせください。
塩田 ヨシを使った地域ブランドを生み出すことで、どこか1社だけでなく、地域全体が潤っていく。そんな未来像を描いています。既に大阪の枚方市や高槻市の事業者が地域ブランドとして売り出そうと私たちの活動に協力してくださっています。枚方信用金庫さんには記念品として採用していただきました。
こうして大阪で成功例を作り他の地域に横展開していくことで、日本各地を盛り上げていければうれしいですね。既に北海道や関東、中国地方から引き合いが来ています。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2024年11月号掲載)
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