「試験当日、会場に複数の受験生が持ち込んでいた」「直前対策の即効性が高い」「親戚の受験生にプレゼントして合格した」
そんな感想が多数集まっているのが、あらゆる小論文試験を対象にした参考書『落とされない小論文』だ。本書は「文章の書き方」だけでなく、「小論文を書くときの材料」までを収録しているのが大きな特徴だ。本記事では、著者の今道琢也氏が文章力「以外」の必須要素を解説します。(構成・画像/ダイヤモンド社 今野良介)
小論文試験は「文章力」だけでは合格できない
小論文試験では、「自分の考えを的確に文章としてまとめる力があるか」を見られています。
しかし、文章力さえあれば合格できるのかというと、そうではありません。
たとえば、温暖化対策についての文章を書くとしましょう。
次の【例文1】をご覧ください。
温暖化対策として、現状のエネルギー利用のあり方を大きく変える必要がある。官民が一体となり、両者の強い連携の元に、今よりも効率的で環境にやさしいエネルギーの実現を目指していくべきである。その際には、地元住民との関係性を良好に保つことも大変重要である。すなわち、地元住民に十分配慮した取り組みを進めていく必要がある。
この答案は、全体がとても曖昧です。「エネルギー利用のあり方を大きく変える」とはどういうことか、「官民が一体となり」とはどういうことか、「地元住民にも十分配慮した取り組み」とは何なのか、もっと具体的に書かないと、読み手に伝わりません。
しかし、私の指導経験上、多くの答案はこの段階に留まっているのです。
なぜこのような答案を書いてしまうかというと、出題テーマに対しての知識が十分でないからです。
では、この答案を下記【例文2】のように書き直したらどうでしょうか。
温暖化対策として有効なのは、太陽光、風力、地熱などの再生エネルギーの発電を増やすことである。再生エネルギーによる発電量は、現在2割程度に過ぎないが、これを倍増させる目標を立てるべきである。実現へ向け、企業の再生エネルギーへの投資を活発にするために、政府が参入条件について規制緩和をすることが求められる。また、再生エネルギーの設備を建設する際の補助金制度も充実させるべきである。ただし、太陽光パネルや風車は景観を壊すとの指摘もあり、住民の反対運動を招いているケースもある。このため、地域住民への説明会などを開き、十分な理解のもと進めていくことが重要となる。
この答案ならば、読み手の頭にはっきりしたイメージが浮かびます。温暖化対策として、何をどうするのかが、頭の中でサッとイメージできます。ここまで書けたら「合格答案」です。
これくらい具体的な答案を書くためには、温暖化対策に対して、次のようなことを知っておかなければいけません。
・再生エネルギーを増やすための方策として、規制緩和や補助金制度の充実が考えられること
・太陽光パネルや風車の設置が、住民の反対運動を招いているケースがあること
このことからわかるように、小論文は、そのテーマに対しての知識がなければ高評価となる答案は書けません。単に「文章がうまい」と言うだけでは太刀打ちできないのです。
温暖化対策は、公務員試験、あるいは大学入試でもよく出る出題ですが、防災に関して今どんなことが問題になっていて、解決策としてどのようなことが考えられるのか、事前に勉強しておかなければ、具体的で説得力のある答案は書けません。
これは他の小論文試験でも同じことが言えます。
たとえば昇進試験では、「職場のコミュニケーションをどう活性化させるか」「部下の育成にどう取り組むか」というような出題がよくありますが、それに対して具体的な「打ち手」を考えておくことが大事です。本番の限られた時間の中で考えるのは限界があります。
解答の「材料」となるものを、事前の勉強や考察によってなるべく多く持っておくことが大事です。そうしておくことで、限られた時間で説得力のある答案を書くことができます。
拙著『落とされない小論文』では、「文章の書き方」の解説に加え、小論文試験で活用できる「材料となるもの」をテーマ別に書き出しています。下記の一覧にある項目すべてについて、「文章を書くための材料」を掲載しています。
「小論文を書くときの材料」テーマ別一覧表
(※本稿は『落とされない小論文 増補改訂版』の著者・今道琢也氏が特別に書き下ろしたものです。)