学校の先生や親や上司などから「もっと具体的に書きなさい」「具体的に言うとどういうこと?」と言われたことのある人は多いでしょう。でも、「具体的にしろ」という指示自体が抽象的ですよね。どうすればいいのか、よくわからなくないですか?
新刊『落とされない小論文 増補改訂版』の著者「ウェブ小論文塾」代表の今道琢也氏が、「具体的に書く」について文例を用いて解説します。(構成・写真/ダイヤモンド社 今野良介)

「具体的に書く」とはどういうことか?

大学のレポート、小論文、エントリーシート、企業内の報告文書など、文章を書く機会はさまざまあります。

そういう時に、あなたの文章は今ひとつ「伝わる文章」「わかりやすい文章」になっていないと指摘されてしまう人は多いのではないでしょうか。

「伝わる文章」「わかりやすい文章」にするための大きなポイントは、内容をどこまで「具体化」できているかです。

そのためには、「例えばこう」という問いかけがとても大事になります。

一例として、下記の文を見てください。私の故郷は大分県なので、全国の人々に大分県の魅力が伝わる文章を考えてみます。

【文例1】
大分県を訪れた人々は、本当に素晴らしい場所だと誰もが心から喜んでくれます。文化、歴史、食べ物、美しい自然の風景など、どれをとっても、ここでしか味わえないさまざまな魅力にあふれています。最近では海外からのお客様も大変多くなっています。皆さん県内の観光をとても楽しんでおられます。このように、日本人だけでなく世界中の人びとにも満足してもらえる、心からお勧めできる場所です。

この文章では、大分県の魅力がどこにあるのか何一つ伝わりませんね。その理由は、具体性が全くないからです。

・本当に素晴らしい場所
・ここでしか味わえないさまざまな魅力
・心からお勧めできる場所

このような抽象的な言葉を100個並べても、読む人には全くイメージが浮かびません

「本当に素晴らしい場所」「どれをとっても、ここでしか味わえないさまざまな魅力」に対して、「例えばこう」という例を徹底的に出してみましょう。

大分県の魅力と言えば、なんと言っても温泉です。

しかし、ただ「温泉がある」と書くだけでなく、どんな温泉があって、どこが魅力なのか、食べ物はどうか、どんな景色が広がっているのか、徹底的に「具体化」して書いていきます。

【文例2】
大分県の一番の魅力は温泉です。別府、湯布院には三千以上の源泉があり、肌に優しい泉質で美肌効果も抜群、別府湾の夜景を一望できる温泉もあります。また、たっぷりな肉汁と柔らかな食感の豊後牛のステーキ、ぷりぷりの車エビの刺身など、おいしいものをたくさん味わえます。歴史好きの方なら、国東地方の磨崖仏巡りもお勧めです。

こちらの文章なら、一読して即座にイメージが浮かびます。実際に行ってみたいと思われた方もいるのではないでしょうか。

「具体的に書け」の意味を具体的に説明します。相手の頭にイメージが浮かぶように書こう

このように、文章を書くときは、「例えばこう」というキーワードを何度も自分に問いかけてください。

大切なのは、「現場を知らない第三者の頭に、即座にイメージが浮かぶ状態」にすることです。

『落とされない小論文 増補改訂版』では、このような「読み手が納得する書き方」のほか、試験直前期でも即効性のあるスキルと知識を網羅的に掲載しています。