シェアハウスがブームだ。今年に入り、連続ドラマの舞台にもなるなど、この新しいライフスタイルが注目を集めている。シェアハウスを選択する場合、以前は経済的な理由で他人と賃貸物件を共有するケースが多かったが、今は真逆になったといっても良い。

 同じライフスタイルを有する者が集まり、互いにメリットのある快適な生活をしたい。それがシェア物件を選ぶ最大の理由になりつつある。そんな時代に合わせて急増しているのが、いわゆる“コンセプト型”の物件だ。

 2005年から運営されているシェア物件サイトの老舗「ひつじ不動産」でも、昨今は個性的な物件が人気を集めているという。元ソムリエがオーナーを務める一軒家には豪華なキッチンが備えられ、食を楽しむ人々が集まる。他にも海外旅行ファンが集まる家、エステのプロが企画した美容設備が備わった女性向けのシェアハウスなど、何らかのコンセプトを打ち出した物件が主流になっている。

コンセプト型シェアハウスのポータルサイト「Colish」。自分でプランを投稿して、賛同する仲間を集めることができる

 自分でプランを立て、一緒に住む仲間を募りたい。そんなニーズに応えるウェブサービスもある。「Colish(コリッシュ)」だ。こちらは、コンセプト型シェアハウスに特化したポータルサイトである。

 このコリッシュ、使い方は3通りある。まずは、「こんなシェアハウスを作りたい」とプランを持つ場合は、まずアイディアを投稿する。興味を持った閲覧者からメッセージが届けば、実際にコンタクトを取り、具体的な相談を進める。物件は、サイトから探してもよし、独自に見つけてもOK。コリッシュ経由で賃貸契約に結び付けば、お祝い金が支給されるという特典もある。

 プランはないが、面白いシェアハウスに住んでみたいという人は、サイト上で既存物件を探すこともできる。英語のトレーニング量を倍増させるシェアハウス、シングルマザー専用、起業家向けのイベントスペース付きなど、掲載物件はどれもユニークだ。施設内にテントサイトやフリークライミング設備、貸し菜園などがあるアウトドアシェアハウスは、かなりの人気で空きを待っている状態だという。

 2011年のサービス開始以来、170件以上のプランを実施してきたコリッシュ。この4月にウェブサイトのリニュアルを行った。これまでの掲載物件を一覧できる地図を搭載。シェアハウスとして利用可能な賃貸物件情報の掲載も開始した。プランがあり、すでに仲間も集まっている場合は、物件のみを探すことも可能だ。これが3番目の使い方である。

 コンセプトを通じて人と人、物件をマッチングさせるだけでなく、今後はシェアハウスのアイディアコンテストやイベントも開催していきたいとコリッシュプロジェクト代表の小原憲太郎氏は語る。

 共同生活の楽しさは味わいたいが、自分の時間や空間はマンション並に確保したい。プライバシーを守りながら、共有空間でコミュニケーションを楽しむ。そんな一歩進んだ「ソーシャルアパートメント」という居住スタイルも現れている。

 シェアハウスの普及とともに不動産業界の様相も変わってきた。交渉の複雑さや住人トラブルも手伝って、これまではシェアハウスとして物件を貸し出すことを渋る家主も少なくなかった。しかし、今やシェア物件は成長が期待できる優良物件。どの賃貸住宅情報サービスも力を入れ始めているのが現状だ。

「いくらでどこに住むか」から「誰とどんなふうに住むか」の時代へ。今後、幅広い年代に浸透していけば、“共住”の面白さが拡大していくだろう。

(吉田 由紀子/5時から作家塾(R)