「オーナー企業大国」の日本において、最強のオーナー企業は――。『ファミリービジネス白書2022年版』のデータを基に、上場オーナー企業「1580社」の直近本決算の「売上高」「営業利益率」「総資産事業利益率(ROA)」「自己資本比率」「流動比率」を偏差値化してランキングを作成した。特集『オーナー企業ランキング2024年版 上場1580社の全序列』の#23では、繊維製品19社の業種別ランキングをお届けする。11位にワコール、5位にデサントが名を連ねた。果たして1位は?(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
創業から約80年のデサント
TOBで伊藤忠商事の子会社へ
伊藤忠商事が10月末に実施したTOB(株式公開買い付け)によって完全子会社化となったスポーツ衣料大手のデサントは、1935年に石本他家男が創業したツルヤがルーツだ。
もともと伊藤忠とデサントの関係は、半世紀以上もさかのぼる。デサントは米国のゴルフウエアブランド「マンシングウェア」について、64年に伊藤忠と東洋紡績(現・東洋紡)、米マンシングウェアと提携し、日本総販売元になった。これをきっかけに、伊藤忠とデサントは結び付きを深めた。71年には伊藤忠がデサントに出資。伊藤忠は2000年代に入ってからは段階的に出資比率を高め、2010年までに25%超の株式を保有していた。
18年、韓国事業に依存した創業家出身の石本雅敏社長(当時)との対立が表面化し、伊藤忠は敵対的TOBを実施して出資比率を4割まで引き上げた。伊藤忠は繊維カンパニーのトップをデサントに送り込んでてこ入れを図り、業績を回復させた。
それでも競合他社に比べてその成長性は劣後し、25年3月期は“指定席”だった業界3位から陥落する見通し。経営の立て直しを図るため、伊藤忠はデサントにTOBを実施した。伊藤忠の支援の下、デサントは再起を図る。
では、デサントを含む繊維製品における最強の「オーナー企業」は――。
ダイヤモンド編集部は『ファミリービジネス白書2022年版』のデータを基に、上場オーナー企業「全1580社」の直近本決算の「売上高」「営業利益率」「総資産事業利益率(ROA)」「自己資本比率」「流動比率」を偏差値化し、ランキングにした。
ランキングには「同族支配度」についても記載している。同族支配度については、本特集#2『「非上場化しやすい」オーナー企業ランキング【キャッシュリッチな全90社】15位乾汽船、2位北野建設、1位は?』で紹介したように、改めて説明しておく。
下表の通り、『ファミリービジネス白書』(白桃書房)を刊行している日本経済大学大学院の後藤俊夫特任教授らは、オーナー企業つまり同族企業の条件について「経営面」と「所有面」で分析。創業家による関与度によって、6段階に区分した。例えば、創業家から役員を送り出し、さらに筆頭株主であった場合は、同族支配度が最も強い「A」となる。
次ページでは、オーナー企業のうち繊維製品19社の業種別ランキングを一挙に公開する。デサントは5位に食い込んでいる。大手のオンワードホールディングスやTSIホールディングスは何位だったのか。