毎年開いている「美食会」も人気企画です。地元のお得意さまをお招きして普段は使わない食材でおもてなしをするのです。次回は大間のマグロを召し上がっていただくために、私が近々大間に行ってマグロ漁船に乗せてもらう予定です。

――そこまでされるのですね。

坪口 スタッフには「お客さまの予想を超える仕事をしよう」といつも言っています。そのためには新たなチャレンジをどんどんしていく必要がある。そうすることで自分たちにしかできないことの引き出しが増えていくと考えています。

――次はどんなチャレンジを?

坪口 御殿場の地酒を復活させることです。御殿場は富士山の伏流水に恵まれていることから、かつて酒蔵が五つありましたが、後継者不足や日本酒離れなどの影響で一つだけになってしまいました。このままでは日本一の富士山の水で造った地酒が途絶えかねません。それなら私が動こうと考えたのです。

地域のお客さまに愛される飲食店を複数展開、オール御殿場の地酒造りに挑む「御厨榮蔵」の酒蔵(イメージ)

 静岡県の酒造会社をM&Aし、各地の酒蔵で4年ほど勉強させていただいた上で、「御厨榮蔵」という名の酒蔵を立ち上げました。最新鋭の酒造設備を導入した延べ床面積710平方㍍の建物を新たに建造し、25年1月に蔵開きをする予定です。

――どんな地酒を造るのですか?

坪口 富士山の伏流水に加えて、米は御殿場産の「御殿場こしひかり」や静岡県で生まれた酒米である「令和誉富士」、酵母は静岡酵母と、地元のものを原材料として使う予定です。地域の皆さまに酒蔵の土地や建物を提供していただき、マーケティングやブランディングは地元の若手クリエーターチームに依頼するなど、原材料以外もオール御殿場体制で酒造りをしていきます。

 沼津信用金庫さんにも国の補助金の申請や関係各所の挨拶回りなどで大変お世話になりました。創業当初から70年の付き合い。普段から支店長と週1回はお会いしているので、我々のことを熟知しておられて、何をしたいか理解してくださる。非常によきパートナーです。

――今後の抱負をお聞かせください。

坪口 地元で生まれ育って、地域の皆さまに大きくしていただいた会社です。これからも地域の方たちに喜んでもらえるような仕事をしていきたいですね。

(取材・文/杉山直隆 協力/沼津信用金庫 「しんきん経営情報」2024年12月号掲載)

事業内容:仕出し、慶弔料理・各種宴会ケータリングサービス、外食産業、精肉販売
従業員数:222人
売上高:16億9900万円(2023年10月期)
所在地:静岡県御殿場市茱萸沢191‐1
電話:0550‐80‐1122
URL:tsuboguchi.co.jp