自民党内の「権力構造」激変で、ささやかれる岸田再登板説の内実11月22日、自民党の「資産運用立国推進議員連盟」の設立総会であいさつする前首相の岸田文雄(中央奥) Photo:JIJI

 不安定な少数与党に立脚する首相、石破茂の悪戦苦闘が続く中で前首相、岸田文雄の言動がにわかに注目を集める。主要新聞もこぞって岸田の動向を取り上げた。岸田が内閣総辞職して首相官邸を去ったのは10月1日。それからまだ2ヵ月。そもそも岸田が自民党総裁選への不出馬を決断した理由は低迷した内閣支持率にあった。「岸田じゃ選挙は勝てない」――。そんな与党内の声が岸田の耳にも到達した。

 低迷の要因は旧統一教会と裏金問題という「身に覚えのない」(岸田)二つのスキャンダルにあった。それだけに衆院選惨敗は納得がいかないのだろう。3年間の首相在任中の疲れを癒やすどころか、早くも精力的に動き始めた。

 岸田が口にするのは「攻めの政治」だ。石破の政権運営に対する物言いとも受け取れる。与党惨敗だった衆院選を巡っても岸田は厳しく総括した。

「守るだけ、反省するだけだった。これでは勝てるはずがない」

 岸田は素早い行動を見せた。初手は「資産運用立国推進議員連盟」の立ち上げだった。11月22日、議連の設立総会には不仲説が絶えなかった前幹事長の茂木敏充も姿を見せた。岸田は日本長期信用銀行の勤務経験があり、「金融界出身の首相」を自任する。

 首相在任中に新NISA(少額投資非課税制度)の導入や「iDeCo(イデコ)」(個人型確定拠出年金)を積極的に推進したのも、自身の経験と深く結び付いていたようだ。周辺にはこう語っている。

「資産運用は海外からの評価が高い。証券取引所の関係者が言うには、証券市場に入ってきた10兆円の半分はNISA関係で、これが日本の株価を支えている。海外からの流入は3兆円だ」