総合経済対策、閣議決定
実質賃金プラス化は定着するか!?
政府は物価高対策などを柱にした総合経済対策を11月22日、閣議決定した。
国の一般会計の歳出は13.9兆円、財政投融資・特別会計を加えた財政支出は計21.9兆円、民間の支出を含めると事業規模は39兆円になるという。
総合経済対策は、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」実現を掲げる石破政権の経済政策の第1弾ともいえるものだ。
石破首相は閣議決定後、「(国民に)暮らしが豊かになったと感じてもらうためには、現在、そして将来の賃金、所得が増えることが必要だ」と語った。
その意味では、当座の物価高対策だけでなく、実質賃金の引き上げやプラス化定着を、コストカット型経済脱却、高付加価値創出型経済へ移行へのエンジンにするというのは、大枠賛同できるところだ。
しかし、各論では問題含みだ。具体的には、最低賃金1500円を2020年代に達成するという目標には危うさがあり、また今回の総合対策で盛り込まれた「103万円の壁」解消策では、首をかしげる点も多い。
なによりも実質賃金を押し下げる要因の一つになっている「交易条件悪化」の問題への視点が欠落している。
2020年代中の最低賃金1500円達成は無理!?
拙速すぎる目標、「産業別最低賃金」活用を
「2020年代中の最低賃金1500円達成」という、最低賃金引き上げの方向性自体に表立って反対する声はないだろう。だが問題はそのペースだ。
2024年の全国平均が1055円になったことからすれば、今後5年間で平均7%強の引き上げが必要になる。過去10年(2015~24年)の平均上昇ペースは3.1%であり、実現にはその倍を上回るペースでの引き上げが必要だ。インフレ経済への転換を考えれば、引き上げペースが加速することはおかしくない。しかし、今後のインフレ率が2%程度とすれば、実質5%の引き上げであり、かつてないハイペースとなる。