トランプ発言で有識者の多くが悲観論に傾きがちだが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏は市場の実態は異なると指摘する。我々は歴史やデータに基づいた客観的な視点を持つことで、先入観による誤った判断を防ぐべきとアドバイスをする。
トランプ発言を悲観視する一方
市場は不透明感の後退を歓迎
米国外ではトランプ氏の強硬発言が悲観論を煽っている。だが、そうではない理由もある。
「勝負は決まったも同然!(It’s all over but the shouting!)」というこの古い諺は、11月5日の米大統領選の余波を完璧に捉えている。だがドナルド・トランプ次期大統領の勝利により、世界中の評論家の騒ぎは始まったばかりかもしれない。多くの人々は、彼の関税を巡る強硬発言や米国第一のスタンスが貿易に…そして東証株価指数(TOPIX)に有害だと考える。
しかし、ここで落ち着こう。市場は今、不透明感の後退を歓迎している。そして、私はまだ2025年見通しを公式に表明していないが、2025年に関する終末論者の警告を疑う理由もある。説明しよう。
米国株と米大統領選の関係
リターンは平均3.6%のプラス
人々はしばしば選挙後の暴落を懸念するが、それは主に勝者への偏見に基づく。だが実際には、市場は選挙後に上昇するのが(誰が勝とうとも)通例だ。
たとえば、米国株は1928~2020年までに24回あった米大統領選投票日の夜から同年末までの期間のうち3分の2で上昇した。事前から長く弱気相場が続いていた5年を除くと、19回中16回で株式は上昇し、米国株リターン(米ドルベース)は平均3.6%だった。
米国株のプラスリターンは世界に広がる。二つの資産の連動性を示す(+1.00:同一の動きから、-1.00:正反対までの値を取る)相関係数を見てみよう。TOPIXのS&P500に対する相関係数は過去20年間で0.59だ。つまり通常TOPIXはS&P500と同じ方向に動く——米国選挙直後のように。
なぜだろうか?株式にとって政治は主に今後の不透明感に関するものだからだ。日本の皆さんも最近、経験しているはずだ。自民党が総裁選後の解散総選挙で驚きの敗北を喫し、選挙後に高まった不透明感がTOPIXを苦しめた。これは日本株が夏の高値を下回り、低迷した一因だ。だがそれは石破茂首相が11月に再任されたことで一段落するはずだ。