そもそも消費者は情報収集において客観性を極めて重んじる。
セールスパーソンといわれる類いの人たちは、顧客にとっては客観性の対極にある人たちで(売る側の)主観を語るため、情報探索の段階では消費者から避けられる傾向にある。
顧客から営業担当者にアプローチするのは、ある程度情報収集がされ、やりたいことが決まり、買いたい商品やサービスが決まった後だ。営業プロセスではこうした情報収集段階のターゲット層を捉えきれない。
また営業プロセス管理は、購入後の顧客に対しても機能していない。営業プロセス管理では顧客が購入するまでを主に営業部門が担当し、購買した後はアフターサービス部門が担当する。これは売り手側の都合による分け方であり、顧客の体験は一連のもの全てだ。
「顧客の理想状態」の実現が
自社が提供する価値となる
「顧客は購買前、なにをきっかけに、どのような関心を抱き、どのように情報を収集し、意思決定をし、購入後どのような体験をしているのか」を、一貫して理解することが必要なのだ。カスタマージャーニーはそれを可能にする。
青嶋 稔 著
このとき、重要なのが「顧客はどのような状態を目指しているか?」を理解することだ。
購買後の顧客の体験が、思い描いた理想の状態に近づいているのか?それともそうではないのか?これらは「顧客がどのような状態を目指しているのか?」を知らなければ、把握できない。
NPS(R)(注)のように「顧客が自社の商品やサービスを周辺の人々に対して推奨したいと思っているか」を測るのも、把握の仕方としては有効だ。
大切なことは、顧客がどうなりたいかを企業が探し求めていく姿勢だ。顧客の視点に立ち「顧客はどうなりたいのか」を探し、「自社は顧客にどのような状態を提供したいか」を考え、「自社が考える顧客の理想状態」を実現させる。それが、自社が提供する価値となり、本当の意味での顧客理解となる。
カスタマージャーニーを作成しようとすると、その過程で、顧客が置かれている業界、市場環境、顧客について調べることが多くなる。こうした策定の過程にも非常に価値がある。新しい発見や、新たな顧客体験の創造につながることも多い。