これは一般消費者向けにビジネスを展開するBtoCのみならず、企業同士で行われるBtoBでも同じだ。
例えば、土木現場に建機を提供しているレンタル会社であれば、建機を貸す場面のことは理解できるが、その前後にある相手方のプロセスまでは思い描かない。
「測量をする、施工計画をたてる、施工をする、施工計画を修正する、建設が終了し、検収のため測量をする」といった一連の流れまでは考えないことが多い。言い換えれば、それだけ顧客のことを“わかっていない”のだ。
カスタマージャーニーを描こうと試みたとき「顧客のことを如何にわかっていなかったか」と気づくだろう。
営業部門は「顧客のために」とよく声高に叫ぶし、常にそれが大義名分だ。ところが現実は顧客のことはさほど知らない。営業起点で顧客を見ると、自社製品、サービスが売れるか売れないかしか見えてこない。
これまでの発想が、顧客そのものを見ることを阻害していたと、はっと気づくのだ。これは気づきであると同時に、営業部門だけでなく会社全体に大きなインパクトを与えるだろう。
こうしたことを、まず、純粋に発見し、顧客に対する理解の始まりとする。カスタマージャーニー策定への取り組みは、組織の問題意識を強くするきっかけとなる。
現在の営業プロセスでは
顧客の関心を全く拾えない
2:購買前から購買後まで一貫して顧客を見ることができる
顧客はどのように関心を抱き、どのような情報を収集するのだろうか?
この入り口の一番大事な問いに対して、営業プロセス管理は全く応えることができていない。営業プロセス管理では、営業が顧客との接点を持ち始めるところから話が始まるため、営業担当者が接点を持たない場合、プロセスそのものが始まらないのだ。
営業担当者が接点を持っている顧客はターゲット層のごく一部であり、その大半にはリーチできていない。リーチできていない層がどのように関心を持ち、情報収集をしているのかについて、現在の営業プロセスでは全く拾えていない。
その点、カスタマージャーニーでは、購買前の顧客たちに関する議論からスタートする。
彼らがどのような関心を抱き、どんなキーワードで検索をするのか?訪ねるサイトやチェックするSNSはどれか?ウェブ上の口コミや業界専門誌(あるいはそのサイト)など、第三者的なもので情報収集するだろうか?……と、営業プロセス以前の段階から考えていく。