知的謙虚さから、好奇心が生まれる

入山章栄氏が予測する、これからの「第2デジタル競争社会」で伸びる業界とは?いりやま・あきえ/早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で調査・コンサルティング業務に従事した後、米ピッツバーグ大学経営大学院で学びPh.D.取得。ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー、早稲田大学大学院経営管理研究科准教授を経て、2019年より現職。『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)など著書多数。

――デジタルスキルを習得することは重要ですか。

 ある程度の知識は必要だと思いますが、デジタルスキルを身に付ける目的だけで、ワクワクしない会社に行くのは反対です。

 なぜならデジタルスキルは、自学できるからです。オンラインでも学べるし、数日間のテックキャンプのようなものでも十分スキルは習得できます。

 生成AIが出てきたことによって、プログラミングを書く必要がなくなってきています。私もAIに「こういう分析をしたいんだけどPythonのコードを書いて」と言って書いてもらっています。

 つまり、プログラムを知らなくてもAIを使えればいい。もちろんAIの世界のど真ん中に行きたい人はデジタル企業に行った方がいいですが、そうでない人はあえてデジタルの会社に入る必要はないと思います。

――長い間仕事をしていくとなると、リスキリングは重要になりますか。

 学びはもちろん超重要です。ただし、変化が激しい時代ですから、1回や2回学び直すことが大事なのではなくて、半永久的にリスキリングして自分をトランスフォームしていかなくてはいけない。

 これからの時代を生きる人は、ずっと現場で働き続ける「知的ブルーカラー」になる。以前のように若い頃は現場で苦労して働いて、そのごほうびで管理職になって本社で指示するホワイトカラーになる、という時代は終わりました。

 私は「インテレクチャル・ヒューミリティー(知的謙虚さ)」がとても重要だと思っています。世界は広く、自分は世の中のほとんどのことを知らないと認識することです。そこから好奇心が生まれてくる。

 私の周囲でも、優秀な経営者は皆ものすごく知的好奇心が高い。それが100年働くための重要な要素です。そして、前述したように、働くと遊ぶと学ぶが一緒になった状態に自分の身を置いていくことです。

 純粋に自分は何に夢中になれるのか、生きる幸せをどこに見いだすのかを考えて、就活することが最も大切です。