米メリーランド州に住むロバート・スロカさん(35)は、外食産業が今求めているような常連客だ。週に数回外食する。
だがスロカさんは悩みの種でもある。多くの場合、店を選ぶ基準は割引の大きさだからだ。
販促や割引は米国の外食産業にとって、いったん離れた客を呼び戻すための頼みの綱となっている。米労働省によると、外食にかかる費用は新型コロナウイルス禍前と比べて約30%上昇した。レストランチェーンは客足を維持するのに苦戦している。
タウソン大学でスポーツマネジメントの助教を務めるスロカさんは、日曜日に米ハンバーガーチェーンのシェイクシャックに行くことがあると話す。10ドル(約1530円)以上購入するとチキンサンドイッチが無料でついてくる日があるためだ。米宅配ピザチェーン大手ドミノ・ピザの半額メニューにも飛びついたが、それがなくなってからは、テイクアウトすると7.99ドルになる、トッピングが1種類のピザを頼むようになったという。
「欲しい特典があれば利用するが、たいていそれしか買わない」とスロカさんは話す。
市場調査会社インタッチ・インサイトが9月に外食利用者1793人を対象に行った調査によると、北米の消費者の81%がこの3カ月間にファストフードのバリューミールを注文したとみられる。約半数が、特典を理由に外食の頻度を増やしたり行く店を変えたりしたと回答した。
ただ、企業やアナリストによると、特典は必ずしも利益や顧客の再訪をもたらしていない。そのため外食チェーンの幹部らは、割引や無料提供の効果を検証している。米コーヒーチェーン大手スターバックスは今年に入り、コーヒーと朝食の5ドルのセットを試験導入したが、数カ月で中止した。効果が出ていなかったと同社が明らかにした。
KFC親会社の米ヤム・ブランズと、ポパイズを展開する加レストラン・ブランズ・インターナショナルは11月、米国で実施した特典が期待していたほど集客アップにつながらなかったと説明した。両社は現在、より低価格のメニューを提供している。
カリフォルニア州のチェーン店エル・ポヨ・ロコは10月、直近四半期は注文が減少したと発表。サラダとブリトーを9~12ドルで提供する販促を実施したが、顧客数が十分に伸びなかったという。その後、5ドルのタコスとボウルをメニューに追加した。これは客受けがいいとリズ・ウィリアムズ最高経営責任者(CEO)は話す。「長年これがこの業界の魔法のプライスポイント(最も売れやすい価格)だ」とインタビューで語った。