2024年の上場企業の早期・希望退職に異変が生じている。今年判明した募集者数は53社、9219人にのぼる。年間で3161人だった前年の3倍に達し、2021年以来、3年ぶりに1万人を超えることがほぼ確実になった。最近の早期・希望退職の大きな特徴は、実施企業の約6割が黒字企業で、対象年齢も30代の若い世代や勤続年数が短い従業員にまで広がっていることだ。人手不足が深刻さを増すなか、希望退職の加速は奇異に映るが、不一致の背景には企業の事業戦略への「選択と集中」と、企業が求める人材のスキルのミスマッチがある。日本型の終身雇用が終焉し、欧米型の雇用体系へと動き出す予兆なのか。(東京商工リサーチ情報部 本間浩介)
上場企業の早期・希望退職募集
相次ぐ大手メーカーの改革
今年、「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は53社(前年同期36社)で、前年同期の約1.5倍に増えた。対象人員は9219人(同2915人)で、すでに前年の社数、人数も上回るハイペースだ。
業種別では、最多は製造業が37社で約7割(構成比69.8%)を占める。次いで、情報通信業が8社(同15.0%)、卸売業とサービス業が各3社(同5.6%)、小売業とサービス業他が各1社(1.8%)。製造業の突出ぶりが目立っている。
上場区分は、東証プライムが37社(構成比69.8%)で圧倒的に多く、黒字企業は32社(同60.3%)と6割を占めた。
こうしたデータから、今年の上場企業の「早期・希望退職募集」は、大手メーカーで動きが活発だったことがわかる。それも、日本企業を代表する大手企業のケースが相次いだ。
例えば、富士通は「セルフ・プロデュース支援制度」を発表。募集人員は未公表だが200億円の費用を計上し、(ポスティング・リスキル、外部転進を通じた人材最適配置と生産性向上を目的にした間接部門の幹部社員対象のセルフ・プロデュース支援制度)を設けている。
また、経営改革プラン「ミライシフトNIPPON2025」を公表した資生堂は、早期退職支援プランで、(資生堂ジャパンの社員のうち、一定年齢や勤続年数などの条件を満たす者に年齢に応じた特別加算金、希望者に対する再就職支援サービスの提供)を設けた。