一方、協和キリンの「特別希望退職制度」では、30歳以上かつ勤続3年以上の経営職、一般職、再雇用社員が対象だ。武田薬品工業は、「フューチャー・キャリア・プログラム」として日本のR&D部門で指定する組織に所属する従業員で、勤続3年以上を対象にしている。これまで中高年が中心だったが、若年層まで対象を広げたのが特徴的といえる。

 この4社は、いずれも最新決算が黒字だった。経営の効率化を図ったうえで、新規分野への投資などで構造改革を強化する意向が働いたとみられる。

 ただ、従来型の業績不振から事業再建を進めるケースもある。関連会社の堺ディスプレイプロダクトの生産停止を決定したシャープは、同事業の従業員500人の希望退職を募集した。

 また、ここにきてにわかに注目を集めるのが日産自動車だ。中国・北米市場などで販売不振に陥り、事業戦略の選択を迫られ、全従業員の7%にあたる国内外で合計9000人規模の人員削減策を発表した。(注:上場企業の早期・希望退職の集計は国内事業を対象としているため、国外従業員は対象外)

 このほか、リストラ・再建型では情報通信業が目立ち、DX事業を手掛けるスカラや、モバイルオンラインゲームを手掛けるgumiなどが募集を実施した。コロナ禍でDX化が叫ばれ、需要拡大でIT系企業は人員を増やしたが、コロナ禍が収束した今、人員適正化の動きがみられる。

コロナ禍の収束により
一気に動き出した大手企業

 これまでの早期・希望退職募集は、2021年はコロナ禍でインバウンド需要が消失し、外出自粛のあおりを受けた観光や外食、アパレル、小売りなどで業務縮小が相次いだ。同年の実施は84社で、募集人数は1万5892人に達した。

 その後、コロナ禍の支援策の柱の1つだった雇用調整助成金の特例措置などが効果をみせ、2022年が38社(募集人数5780人)、2023年も41社(3161人)と落ち着いて推移した。