経営の中枢 CFOに聞く!#6Photo by Masataka Tsuchimoto

大阪ガスは今春、株主還元強化策を発表した。東京ガスは脱炭素投資などを理由に総還元性向の目安を引き下げたが、大ガスは脱炭素投資との両立がなぜ可能とみたのか。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、大阪ガスの財務部トップに話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

今春の新中期経営計画で
DOE3%、累進配当を表明

――今春の新中期経営計画における株主還元方針の変更(配当性向30%以上→株主資本配当率〈DOE〉3%、累進配当)には、より投資家を意識した経営姿勢を感じます。

 経緯からご説明すると、インフラ会社ということで古くからガスをやっています。アセットを自分たちで持ってマネジメントしていくというのが元々のベースにありました。1995年ぐらいから規制緩和が進み、2016年に電力小売り全面自由化、17年にガス小売り全面自由化。今後競争環境が厳しくなるのは見えており、関西圏を含めて日本は人口減。使命であるエネルギー供給をしっかり果たしていこうとすると、持続的に企業として成長していくことが外せないポイントでした。

 そこでガスだけではなく総合エネルギー企業として、再生可能エネルギー等も含めて展開していこうと。海外ではLNG(液化天然ガス)の安定調達のためにオーストラリアや米国で権益を取得しました。

 そうなってくると、国内でも海外でもさまざまな事業リスクを取っていくことに。財務の立場とすると、事業戦略に対して、財務基盤を強固にしていくことが重要でした。実際14年公表の中計では、自己資本比率の目標を40%以上としていたのを50%以上に引き上げました。

 今回の中計では事業ポートフォリオの強靱化が進んできましたので、若干バランスを見直しました。財務の安全性も考慮しながら財務レバレッジを少し拡大。自己資本利益率(ROE)をより重視する経営に。株主に対しても、より配当の予見性を高めました。

結果は今春以降の株価へ反映され、時価総額で24年ぶりに東京ガスを抜いて一時、ガス業界トップに。次ページから、株主還元強化も将来投資も両立できるとの強気な見通しを示せた根拠、中計で定めた財務規律と格付けの関係などに言及する。