株式持ち合い(政策保有株)は戦後の日本で急進したが、現在は売却が進んでいる。政策保有株の意義は戦後80年でどのように変遷し、今に至るのか。特集『総予測2025』の本稿では、金融庁・開示担当の新発田龍史審議官に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
銀行主導のガバナンスが機能
成熟経済への移行で前提崩壊
――2025年は戦後80年の節目の年です。戦後から始まった株式持ち合い(政策保有株)の意義はどのように変わりましたか。
戦後の財閥解体によって、財閥が保有していた株式が放出され、個人投資家による所有が進みましたが、戦後間もない時期の経済が厳しい状況では個人投資による株式消化には限界がありました。そこで、独占禁止法の改正によって事業会社による株式の所有制限が緩和され、株式持ち合いが始まりました。
株式持ち合いとは、株主がお互いに余計なことを言わないということ。株主には企業経営にモノを言う権利があるので、そもそもその権利を放棄して株主が口を出さないというのはおかしな話です。
ただしその代わり、企業に対する債権者である銀行がしっかりと口を出す。国は護送船団方式で銀行を守る。銀行は企業をモニタリングして経営の安定を図っていたので、ガバナンスの主体として一定程度機能していました。
ところが、高度経済成長が終わると前提が変わります。1991年のバブル崩壊後、90年代後半の金融危機、不良債権問題に対応していく中で、銀行はガバナンスの担い手としての役割を終えました。銀行の株式保有自体が、株価下落を通じて銀行の健全性に悪影響を及ぼすと同時に、政策保有株の構造的な課題が表面化し始めます。
バブル崩壊後に問題が表面化し始めた政策保有株について、新発田審議官は「投資家が納得できる説明になっていないのが今の開示の実態」だと話す。次ページではその発言の真意に加え、金融庁としての対応策を聞いた。