メガバンク・地銀・ネット銀を大解剖 [最新]銀行ランキングPhoto:PIXTA

金融機関の政策保有株式の縮減動向に注目が集まっている。そこで大和総研では、2024年3月時点で東京証券取引所に上場する金融業168社を対象にデータを集計し、金融機関における政策株の保有状況や純投資への振り替えについて調査した。(大和総研金融調査部 研究員 矢田歌菜絵)

政策株「縮減」の実態は?
上場の金融業168社を調査

 金融機関が保有する政策保有株式への懸念が高まっている。

 背景には、鈴木内閣府特命担当相(金融)が損害保険会社の保有する政策株について、売却の加速が重要である旨の発言をしたことが挙げられる。

 政策株を巡る問題点は主に二つある。

 一つはコーポレートガバナンス上の問題だ。政策株を保有されている会社の株主総会の意思決定が、一般株主とは異なる利害関係(取引関係等)によって議決権行使がゆがめられる危険性がある。

 もう一つは資本効率性の問題だ。政策株が必ずしも十分な合理性やその効果の検証がないまま保有され続けることで資本効率性を損ない、中長期的な企業価値向上のために必要な研究開発、人的資本投資や、株主還元などが十分に行われない危険性がある。

 このような議決権の空洞化や資本効率の低下といった政策株の保有に伴う懸念を受けて、金融機関は近年、政策株の縮減を進めてきた。

 一方、政策株を縮減する方法は売却以外にも「保有目的が純投資目的である投資株式」に区分を振り替える方法がある。ところが一部の企業において、政策株が「純投資目的」と整理され、政策株としての開示が行われていないケースがあるとの批判がある。

 そこで本稿では、2024年3月時点で東京証券取引所に上場する金融業168社(「銀行業」79社、「証券、商品先物取引業」39社、「保険業」13社、「その他金融業」37社。2024年4月に上場廃止となった1社は除く)を対象に、政策株(上場株式のみを対象)の保有状況や純投資への振り替えについてデータを集計し、金融機関の状況を調査した。その結果を次ページで公開する。