――順調そうに見えますが、その道のりは楽ではなかったのでは?

鈴木 10年頃までは私ともう1人で製造を担当し、検査員も2人だけ。その少人数で高精度の加工を行っていたので、一時は寝ずに働いていた記憶があります。夜中に「あそこをこうしたらできるかもしれない!」とひらめき、工場に行って機械を動かすこともありましたね。

 ただ、そんな試行錯誤を重ねることで、厳しい寸法精度をクリアする技術と質の高い製品を安定的に提供する管理力が身に付き、競争力が一気に高まりました。

――最近、力を入れていることは?

競合他社の逆を行き差別化に成功、時代の流れに合わせて売れるものを作るカーレース用タイヤ削り機の「削丸」。近々安全装置付きの製品をリリース予定

鈴木 部品製造とは別に、カーレース用のタイヤ削り機の「削丸Kezmaru」を22年に自社で開発しました。レース後のタイヤは表面が溶けて劣化するのですが、その部分を削ると新品同様の性能を取り戻せます。

 タイヤを削る行為は大半のカーレースでは禁止ですが、私が趣味で始めたタイムアタックでは許可されています。既に他社の機械はありましたが、本業の精密加工の技術を生かせばもっと高精度で削れると開発したのです。

 すると早速レース関係者から注文があっただけでなく、レースとは別の用途で大手企業から引き合いがありました。25年は海外の市場調査をする予定です。

 開発資金は、西武信用金庫さんのアドバイスを受けて事業再構築補助金で調達しました。西武信金の支店長さんとは小まめにお会いするので、うちの仕事内容や長所を理解してくれていて、的確なアドバイスを頂ける。頼りにしています。

――今後の展開は?

鈴木 弊社のビジネスは時代の流れに大きく影響されるので、将来の目標ははっきり決めていません。これからも時代の流れを読んで、世の中に必要とされる商品を作っていきたいと考えています。

(取材・文/杉山直隆 協力/西武信用金庫 「しんきん経営情報」2025年1月号掲載)

事業内容:主軸移動型精密自動旋盤による挽き物加工業
従業員数:8人
売上高:1億4800万円(2023年12月期)
所在地:東京都青梅市長淵7‐52
電話:0428‐24‐2205
URL:kanesuzu.co.jp