AIで躍進のブロードコム、エヌビディアへの脅威とは限らずPhoto:Justin Sullivan/gettyimages

 時価総額を1兆ドル(約154兆円)に乗せた人工知能(AI)半導体メーカーが新たに現れた。その一方で、すでに1兆ドルに到達した先駆企業も好調を維持している。

 米半導体製品大手ブロードコムは、先週発表した8-10月期(第4四半期)決算に含まれていたAI事業の長期見通しが株価押し上げ要因となり、時価総額が1兆ドルを突破した。AI半導体で先頭を走る米エヌビディアには逆の影響を及ぼしたようだ。決算発表以降の2営業日でブロードコムの株価は38%上昇する一方、エヌビディアは約4%下落した。

 両社の差は依然として大きい。エヌビディアの時価総額は16日の取引終了時点で約3兆3000億ドル、ブロードコムは約1兆2000億ドルだった。ただ、ブロードコムがリードしている部分もある。同社の今後4四半期の業績に基づく株価収益率(PER)は最近の株価急伸で38倍を超えた。ファクトセットのデータによると、これは過去最高水準で、3年間の平均の2倍になる。また、ブロードコムのPERがエヌビディアを上回るのは、ブロードコムが2016年初めにアバゴ社と合併して現在の形になって以降で初めとなる。エヌビディアの16日時点の予想PERは約31倍だった。

 投資家がブロードコムの将来に期待を寄せるのには十分な理由がある。同社の半導体事業は多様であり、活況を呈するAI市場に絡む分野がいくつかある。エヌビディアの半導体クラスターなど、データセンターの機器同士を接続するネットワークプロセッサーの供給でブロードコムは大きな地位を占める。また、米アルファベット傘下グーグルや米メタ・プラットフォームズといった大手テクノロジー企業がデータセンター向けに独自のAI半導体を設計する際に、ブロードコムは重要なパートナーとなっている。

 ブロードコムが手掛けるカスタムAI半導体(ASICとも呼ばれる)は、エヌビディア製品と同様のAI関連作業を一部処理できる。このため、見通しに関して慎重なことが多いブロードコムのホック・タン最高経営責任者(CEO)が先週示した強い予想は、エヌビディアの今後の成長に対する懸念材料と解釈することもできるかもしれない。タン氏はアナリストとの決算説明会で、ブロードコムの主要顧客であるテック大手3社は2027年10月期にASICとネットワーク機器に600億~900億ドルを投資することが予想されると語った。AI半導体市場の関連では、ブロードコムはこれら2分野を手掛ける。