ディーラーと本社のコミュニケーション不足
場当たり的な商品戦略から脱せない

 最後に、セールスというかユーザーコミュニケーションの観点を深掘りしたい。これについては、日産から顧客へメッセージを出すことも、顧客が日産に何を期待しているか真摯に耳を傾けることも、失敗していると感じる。

 どんなに良いクルマでも、消費者に日産の意図が的確に伝わらなければ、売れない。言い換えれば、消費者の好みからは多少外れていても、それが良いクルマなのだと認識させることができれば、現行品だけでもう少しマシな売れ方をしただろう。日産で海外営業を担当していた関係者はこう語る。

「特に北米ではこの5~6年、日産がクルマを通じて何を大切に思っているか、どういう喜びを提供したいかといったメッセージを出せていませんでした。売れ筋のクラスに新商品を投入すれば、それなりに売れるだろうといった、場当たり的な商品戦略でした。それでは、ライバルに力負けするのは当たり前。クルマのせいにする前に、営業がやれることもたくさんあったと思います」

 どうも日産は、消費者に最も近い販売現場の声を、本社がまともに吸い上げられていなかったようだ。先の関係者はこう続ける。

「ユーザーが日産に何を期待しているか。こういうのはすぐにクリニック(市場調査)頼みになるのですが、ユーザーの本心はアンケートやインタビューの結果で分かるものでもない。ユーザーの熱量を日々肌で感じているのは、ディーラーです。そのディーラーと本社のコミュニケーションが十分とは全く言えません。これを解決しないから、当てずっぽうでクルマを造って空振りするという悪いサイクルから脱せない」

 大規模リストラという企業にとって負荷の高い作業と並行して、クルマ造りの抜本的改革を行うのは簡単ではない。しかし、先に述べた通り日産は本業危機であり、売れるクルマを造って世に出して稼ぐ以外、生き残る道などない。それはホンダと経営統合しても変わらないのだ。

 果たして改革をやり切るだけの意思を経営陣や従業員が持てるのか。とどのつまり、日産の復活はそこにかかっているといえる。