眉間にシワが出ていると
難聴は加速度的に進行する
問診をしている時も、検査が終わってその結果を説明している時も、ずっとそのシワサインが出ています。そして全ての診察が終了したタイミングで、私は自分の眉間を指しながら尋ねました。
「失礼ですが、ここのシワについて誰かに指摘されたことはありませんか」
すると、その男性は「あぁ、よく言われます」とうなずくのです。私はこう説明しました。
「ここのシワは脳にものすごく不安があって、体が緊張し、ストレスを感じているときに出るサインなんですよ。このシワが出ていると、加齢性難聴が加速度的に進行してしまいます」
ストレス状態が長期化すると
交感神経が異常に活性化
なぜ、ストレスが加齢性難聴や耳の不調を悪化させてしまうのでしょうか。
“適度な″ストレスはあった方がいいことが知られています。
しかし、仕事や人間関係などの問題が長期化したり、繰り返したりしてストレス過多になると、CANの興奮が抑えられなくなり、その結果、交感神経が異常に活性化した状態になります。
交感神経が優位になると、呼吸は速く浅くなり、心拍数は増え、血管が収縮して血圧が上昇し、心と体は緊張モードになるわけですが、それが続くわけですから、夜もよく眠れず、体の疲労もとれませんね。そして脳はますます疲弊します。
また、脳の前頭前野は交感神経が興奮し過ぎるのを抑えますが、そこもオーバーワークになって機能が低下してしまいます。
すると情緒が不安定になり、交感神経の異常な興奮で血流が悪い状態が続くので、肩こりや頭痛になるなど、さまざまな不調を招くことになってしまうのです。いわゆる自律神経失調症といわれる状態ですね。
過度のストレスや睡眠不足が
突発性難聴の引き金に
自律神経失調症になると、心臓では狭心症発作、気管ではぜんそく発作、皮膚ならじんましん、消化管では過敏性腸症候群などの病気を後押ししてしまいます。そして耳も、聞こえが悪くなるのです。交感神経の興奮は耳回りの血管が収縮し、血流が悪くなるので、難聴、耳鳴り、やがてめまい発作(メニエール病)などのリスクが高くなることが分かっています。
ある日突然、片方の耳が聞こえなくなる「突発性難聴」という病も、睡眠不足や過度のストレス、疲れがたまっているときに発症することがほとんど。突発性難聴は“耳の心筋梗塞″と指摘する医師もいるほど、すぐの治療が求められ、その後“聞こえ″が戻らなくなる可能性も……。
若い人から高齢者まで起こり得る病ではあるものの、平穏無事に過ごしている人は突発性難聴になりにくいのです。