対話やプレゼンの冒頭で、目的を話したり、自己紹介をしたりしている人も多いだろう。しかし、それだけでは不十分だ。目的は伝えても、所要時間を話していないと、相手を不安にさせる。

 自己紹介はしても、背景を話していなければ、いったいなぜこの人の話を聞くのか気がかりを残したままになる。相手の関心度、集中度を高めることができない。

 BIGPRの5要素全てを満たすことが、「つかみ」の効果をもたらすのだ。

 そして、過去の演習プログラム参加者が、最も目新しいと思い、一段と効果が高いと感じたのが、Role、相手に期待する役割を伝えることだ。

 相手に期待する役割を語らないで話し始めてしまうことはよくある。

 しかし、それでは「いったい自分はどういうつもりで対話や会議に参加すればよいのか」「ただ聞いていればよいのか、発言が必要なのか」といったことがはっきり分からない。そのため、冒頭から相手の引き付けることができないのだ。

 また、「背景や目的、所要時間は事前に案内しているから、改めて伝える必要がないのではないか」という質問を受けたことがある。

 ただ、その場合もその場で改めて伝えることで、「背景・目的・所要時間はこうだったな」と相手を安心させる効果が期待できる。

 時間を超過してしまう対話や会議が少なくない中、話の冒頭で所要時間を伝えることで、「この話し手はしっかりと時間を認識している」という安心感を与えることができる。

 普段仕事をしている相手との対話や会議であれば、自己紹介は不要だと思うかもしれない。しかし、所属や名前を語ることだけが自己紹介ではない。

 前に挙げた話法例のように、「メールを拝読し、心配していました」と、今の気持ちを語ることで、「こういう気持ちで参加してくれているのだな」という気心を相手に知らせる効果がある。

「万全に準備してきましたので、張り切ってプレゼンさせていただきます」というように、今の自分の状況を語ることも、立派な自己紹介だ。