顧客ニーズに全く合っていなかった…
トランプ・シャトルの機内食
米国で規制緩和が進んだ1980年代以降、航空業界が運低運賃を競うようになり機内食を合理化・有料化させた一方、差別化のため高級サービスにまい進する会社もあった。その一つが、ドナルド・トランプ氏が1989年に創業したトランプ・シャトルだ。
トランプ・シャトルは、ニューヨークからボストンやワシントンD.C.を結ぶシャトル便を運航していたイースタン航空の権益を受け継いで設立した。不動産やカジノ業で成功したトランプ氏らしい、華やかさが売りの航空会社であった。
機内はワインレッドのカーペットが敷かれ、トイレや洗面台には大理石に近い素材が使われるなど、高級ホテルのような内装だった。飛行時間は1時間30分未満にもかかわらず、機内食が無料で、ワインを飲むこともできたという。
しかし、実業家で鳴らしたトランプ氏、航空ビジネスでは大失敗した。シャトル便は機能性重視、忙しいビジネスマンがいつ会社を出てもすぐに乗れることが最大のサービスであり、豪華な内装や機内食は顧客ニーズになかった。中古機を45分間隔で使う過酷な運航にも無理があり、着陸料などのコストもかさんだ。
そのため創業翌年には経営が悪化し、カリブ海のリゾート地向け路線も就航するなどしたが業績は好転せず、1992年にUSエアー(現:アメリカン航空)に救済買収された。このトランプ・シャトルの失敗は、現代でも語り草となっている。
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