また、同じ建設業界の話で言えば、大手ゼネコン29社と協力会員184社で、「建設RXコンソーシアム」が立ち上げられました。そこでは、建設現場でのロボットの活用やドローンによる測量、パワーアシストスーツの開発など、さまざまな技術革新が進められているそうです。作業の半分をロボットに任せることを目指しているゼネコンもあるといいます。
AIの登場によって、従来の人間の仕事はどんどん形を変えています。広い場所で、ざっくりと壁を壊してトラックに載せて……というような定型作業は、人間の手を離れ、AIやロボットにお任せする時代になりました。一方で、「人間にしかできない仕事」の重要性が増しているのも事実です。特に、繊細な作業や長年の実務経験がものを言う場面では、依然として人間の力が求められています。
大まかな作業はAIに任せ
人間の熟練の技で仕上げる
たとえば、工事現場の穴を掘る仕事においての最終段階では、確実に人間の手が必要だと言われています。地下にはさまざまなものが埋まっているため、数ミリの作業の狂いが大事故につながりかねません。非常に緻密に、かつ状況に応じて臨機応変に作業する必要があります。これはなかなかAIにはできない、人間の熟練の技が求められるのです。
アメリカの翻訳業界でも、AIの影響によって仕事の内容が変わりつつあります。かつて翻訳者は、1語1語辞書を引きながら他言語から英語への翻訳を行うことが一番の仕事でした。しかし今は、AIによる機械翻訳が一瞬で翻訳を完了します。その代わり、人間には、AIによる翻訳結果をチェックし、自然なニュアンスの文章に調整し、編集する仕事が求められるようになっています。
今後、さらにAIの性能が高くなっていけば、たとえ英語がわからない人でも、編集作業ができれば翻訳の仕事が回ってくるようになるかもしれないのです。
この流れは、19世紀初頭のイギリスで起こった「ラッダイト運動」を思い出させます。1811年から1816年頃にかけて、イギリスの織物産業地帯で起こった労働運動です。この時期、産業革命の進展で、織物産業に新しい機械がどんどん導入されていたのですが、特に力織機の導入によって、これまで手作業で織物をつくっていた職人たちの仕事が奪われる事態となりました。