焦りを覚えた多くの労働者たちは「仕事を奪われてなるものか。手作業に戻せ!」と、伝説の指導者ネッド・ラッドの名を挙げながら工場に侵入し、新しい機械を次々と破壊していったのです。最終的にこの運動は政府による厳しい弾圧を受け、多くの参加者が逮捕・処刑されて終わりました。機械化の流れを止めることもできませんでした。
AIの進化がもたらす
新しいキャリアへのチャンス
また、自動車が登場すると、これまで高い給料を得ていた馬車の御者の多くは職を失いました。というのも、彼らの持っていた「馬を育て、馬を自在に操って行きたい方向に行かせる技術」は、自動車の運転にはまったく不要になってしまったからです。
けれど、仕事はなくなるだけではありません。技術革新は同時に新しい仕事も生み出します。たとえば自動車産業の発展から、整備士やガソリンスタンドの従業員、交通警察官など、新しい職業が生まれました。
先の例で言えば、翻訳業は文章を整えるという仕事に形を変えました。求められる技術はどんどん形を変えていくのです。
また、収入を得る方法にも変化が出るかもしれません。翻訳業なら、AI化により自分が1から翻訳する必要がなくなります。労力がかからなくなる分、仕事1件あたりの単価は下がります。けれど、その分こなせる仕事量が増えるかもしれません。「単価が高い×受注数が少ない」から「単価が安い×受注数が多い」に変わる。結果として、トータルの収入は変わらないということにもなるでしょう。つまり、仕事のスタイルが変わるということです。
大切なのは、AIの進化を恐れるのではなく、それを自分の強みを活かすチャンスと捉えること。自分にしかできないこと、人間にしかできないことを見つけ、それを磨いていくことです。
そう考えると、AIの時代は、むしろこれまでの経験を活かしつつ新しいキャリアを築くチャンスとも言えるかもしれません。ラッダイト運動の時代とは異なり、私たちには変化を予測し、それに備える機会があります。自分の強みを再発見し、それを活かせる資格や仕事を見つけることで、AIと共存しながら、豊かな人生を送ることができるはずです。