国内ガス首位で、新電力最大手でもある東京ガス。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、笹山晋一社長CEO(最高経営責任者)のインタビューをお届けする。今後の株主還元策に加え、一時大阪ガスに逆転を許した時価総額、対アクティビスト、国内洋上風力といったテーマについて何と語ったか。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
企業価値を高めるため
資産効率を上げていく
――ガス小売り最大手であり、新電力でも2023年度から販売量最大手に。ソリューション事業でも約1年前に自社ブランド「IGNITURE(イグニチャー)」を発表しました。総合エネルギー会社として着々と成長しています。
前々期、前期の業績がかなり良かった。今期は豪州の液化天然ガス(LNG)権益売却、米LNG権益購入など、構造転換で少し業績が……。来期は構造転換が一段落し、成果を(得て回復させたい)。この間、企業価値を向上させていかないといけないわけですけど、収益が想定以上に良かったです。一方で脱炭素を重視し、すぐにはリターンが返ってこない投資をやってきたことで、資産効率が少し低下しました。そこで企業価値を高めるために資産効率を上げます。ポートフォリオは組み替え途中ですが、だんだん成果を得て、企業価値も含めて上げていく。今期も少し取り組んでいますけれど、来期も進めていきます。
さらには中期経営計画で掲げた三つの柱。
エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立ということでは、LNGの調達面を多様化するなどして安定供給。季節間でボラティリティーが大きくなっているのでトレーディングで需給を安定化させながら収益を上げます。脱炭素も資産効率も考えながら。
ソリューションでは、本格展開ということでIGNITUREというブランドを発表。これからメニューをどんどん増やしていきます。
そして柱の3番目の、変化に柔軟に対応する企業体質。いろいろな手を着実に打ってきたと思います。成果につなげたいです。
――25年のLNGの市場環境をどう見ていますか?
もともと数年前まで24、25年は需給がタイトになるといわれていました。実際、供給側は新規プロジェクトの立ち上がりが滞っていたり、遅れていたりで増えていません。でも、当時言われていたよりは需要がそんなに伸びていません。何かとんでもない地政学リスクが高まらない限り、25年度は需給上、大丈夫そうだと思います。
次ページでは、笹山氏が国内洋上風力、株主還元施策、一時ガス業界トップの座を大阪ガスに奪われた時価総額について語る。また、物言う株主(アクティビスト)から指摘されているとされる不動産事業の在り方、そしてデータセンター事業の可能性についても言及している。