アクティビストが「社宅への巨額投資」にノー!新規上場のITベンダーに異例の株主提案、“日本一の社員食堂”にも矛先Photo:PIXTA

2022年に新規上場したITベンダーに対し、シンガポールの投資ファンドが株主提案を出し、委任状争奪戦(プロキシーファイト)に発展している。投資ファンド側は、同社による社宅や社員食堂への巨額投資や中期経営計画の相次ぐ未達や撤回を問題視し、不動産取得の制限や企業価値向上策の策定を求めている。社宅への過剰な投資とは。異例の株主提案を巡る両者の主張をまとめた。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

投資ファンドがITベンダーに株主提案
社宅や社食への巨額投資の制限を要求

 12月20日に開かれる株主総会に向け、株主提案を受けたのは、2022年に東京証券取引所スタンダード市場に上場したITベンダーの日本ビジネスシステムズ(JBS)。提案を出したのは、シンガポールに拠点を置くスイスアジア・フィナンシャル・サービシズが運営するファンド、グローバル・ESG・ストラテジーである。同ファンドはJBSの株式の約2%を保有する。

 1990年に現社長の牧田幸弘氏が創業したJBSは、クラウドサービスの実装に強みを持つ。近年は米マイクロソフトのクラウドサービスの導入支援で急成長を遂げ、22年8月に新規上場を果たした。2014年には三菱総合研究所と資本・業務提携し、同社は現在も約15%の株式を持つ大株主。牧田氏ら創業家は50%を超える株を保有する。

 JBSが11月上旬に公表した24年9月期決算では、売上高は前年同期比24.9%増の1408億円で、営業利益は同9.6%増の45億円の増収増益だった。25年9月期の売上高は前年同期比6.5%増の1500億円、営業利益は同24.1%増の57億円を見込んでいる。

 一見、業績は好調のように映る。だが、投資ファンドは、中期経営計画の相次ぐ未達や買収による減損といった経営判断のミスを指摘している。加えて、問題視しているのが、従業員向けの社宅や社員食堂に対する巨額の投資である。不動産への過剰な投資によって資本効率が悪化しているとし、株主提案では不動産取得に制限を設けるよう求めている。

 次ページでは、株主提案の中身とともに両者の主張を明らかにしていく。また、異例ともいえる不動産取得の制限を求める株主提案が出されるきっかけとなった、社宅への投資の実態とは。