上場廃止ラッシュ2025 東証の淘汰がついに始まる!#7Photo:Bloomberg/gettyimages

セブン&アイ・ホールディングスが上場廃止の崖っぷちに立たされている。カナダのコンビニ大手の買収提案に屈するか、創業家が自ら買収を行うか。いずれにせよ市場から退場せざるを得ない現状に追い込まれたのは、これまで経営陣が三つの「判断ミス」を犯したからに他ならない。全上場企業が肝に銘じるべきミスとは何か。特集『上場廃止ラッシュ2025』(全11回)の#7で、セブン&アイが単独で上場を維持する「第三の道」の可能性も含めて検証する。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

セブン&アイのビッグディールに
銀行・証券・ファンドが群がる

「まさにオールスターゲームだ。国内トップの投資銀行やローファーム(法律事務所)が参戦し、しのぎを削っている」

 セブン&アイ・ホールディングスのある社員は、「自分は蚊帳の外だが」と自嘲気味に前置きした上でそう話す。カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けた同社では目下、創業家による買収(MBO)を含めた対応を検討中だ。

 その財務アドバイザー(FA)として創業家にSMBC日興証券、経営陣に三菱UFJモルガン・スタンレー証券、買収の是非を判断するセブン&アイの特別委員会に野村證券、出資を検討する伊藤忠商事に大和証券が付き、さらに法務アドバイザーとして創業家に瓜生・糸賀、アンダーソン・毛利・友常、経営陣に西村あさひ、伊藤忠に長島・大野・常松などの法律事務所が付く。

 ちなみにACTのFAはゴールドマン・サックス証券だ。それぞれの利害関係に“壁”を設けるための措置だが、確かに金融と法務のトッププレーヤーが数兆円規模のビッグディールに群がる、史上最大のゲームといっても過言ではない。

 しかし、だからといってセブン&アイや従業員、取引先、傘下のコンビニを利用する国民にとって、最善の選択肢が選ばれるとは限らない。

 そもそもセブン&アイが、上場廃止の崖っぷちに追い込まれたのは、さまざまなアドバイザーを抱えながらも経営陣が判断ミスを繰り返したからに他ならない。そのミスを省みなければ、セブン&アイは必ず悪手を繰り返す。

 それは全上場企業が「明日はわが身」と認識すべき重要事だ。セブン&アイのようにミスで窮地に追い込まれる企業は、今後続出するかもしれない。それは一体何か。次ページで明らかにする。