上場廃止ラッシュ2025 東証の淘汰がついに始まる!#9Photo:PIXTA

フジ・メディア・ホールディングスの凋落が止まらない。元タレントの中居正広氏と女性との一連のトラブルを機にガバナンス問題が注目されているが、上場企業として本質的な問題は、メディア事業の先細りだ。上場廃止を求める投資家の声も強まっており、企業として正念場を迎えている。特集『上場廃止ラッシュ2025』(全11回)の#9で、岐路に立つフジテレビの問題点を検証する。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

ガバナンスの問題だけじゃない!
フジHDが問われる上場企業の責務

「フジ・メディア・ホールディングス(HD)は認定放送持ち株会社であり、放送をなりわいとしている。年々都市開発・観光事業の収益が増えているが、理想的にはそこのバランスを元に戻していきたい」

 1月27日に行われたフジ・メディア・HDの記者会見で、金光修社長はこう発言した。元タレントの中居正広氏と女性との一連のトラブルを発端に責任の所在を問われている同社だが、実はガバナンスの在り方に加えて事業の課題も大きい。

 メディア企業と言いながら、収益の過半を占めているのは実は不動産業などの「都市開発・観光事業」だからだ。下表は、フジ・メディア・HDの過去10年間の営業利益に占める都市開発・観光事業の割合と売上高の推移である。

 フジテレビの売上高は過去10年間で縮小している。2021年3月期から23年3月期付近までは、コロナ禍が減収の理由に挙げられるが、直近の24年3月期の売上高は、コロナ前の19年3月期の6692億円から1028億円減少し、5664億円だ。いわゆる「テレビ離れ」が進んだ結果だろう。

 売上高が減少する中で、営業利益に占める都市開発・観光事業の割合は年々上昇している。15年3月期は28.6%だったが、24年3月期には約30ポイント上昇し、営業利益の58.3%を都市開発・観光事業が占めている。これは過去10年間で最も高い水準だ。

 都市開発・観光事業は同社の収益の柱として存在感を増している状況を考慮すると、もはやフジ・メディア・HDは“不動産屋”と言っても過言ではない。

 さらに金光氏が「今のこの状況では、またメディア・コンテンツ事業と都市開発・観光事業の差が拡大していく」と述べたように、今回の一件で生じたスポンサー離れによってメディア事業の先細りが加速している。

 25年3月期の広告収入は従来予想から15.7%減の1252億円となる見通しだ。これに伴い純利益は前期比約74%減の98億円を見込む。経営への影響も出始めており、都市開発・観光事業の営業利益に占める割合のさらなる増加が予想される。

 放送を「なりわい」にしていくために、フジ・メディア・HDはどうすべきか。

 過去10年間の保有不動産の価値の変化や他のキー局との収益・費用構造の相違に着目すると、フジ・メディア・HDには、二つの課題を突破する必要があることが見えてきた。

 それは上場企業に求められる責務を果たすことが大いに関係している。詳細を次ページで解説する。