セブンの死角#3Photo:JIJI

セブン&アイ・ホールディングス(HD)の創業者、伊藤雅俊氏が3月に死去した。伊藤家は雅俊氏名義を含め時価評価額5294億円もの同社株式を所有しているとみられ、その一部の株式が三井物産に売却されるとの公算が大きくなっている。商社の系列に属さず「等距離外交」を行ってきたセブン&アイHDが、ついに三井物産との提携深化に動くのか。特集『セブンの死角 伊藤忠&三菱商事の逆襲』(全15回)の#3では、伊藤家のセブン&アイHD株式の行方に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

伊藤家の求心力の低下を防ぐ秘策として
社員への株式の再分配も浮上

 セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)は、総合商社の系列に属さず、独立していることを強みとしてきた。コンビニ最大手の強い交渉力で取引先を競争させることで、競合に対して優位に立てたからだ。

 SEJを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングス(HD)は三井物産の出資を受けている(持ち分比率1.8%)のだが、それでも、三井物産は「取引先の一つ」(SEJ社員)という扱いなのである。

 このドライな姿勢が端的に表れたのが、SEJのヒット作、セブンカフェを巡る取引だ。三井物産はセブンカフェに企画から関わり、コーヒーの味の作り込みに協力。当然、コーヒー豆の納入は任せてもらえると期待していた。ところが最終段階で、丸紅と競争させられたのだ。取引先を競わせることで商品力を高めるのがSEJの方針だと理解していた三井物産だったが、この出来事はさすがにトラウマになったようだ。

 しかし足元で、微妙だったSEJと三井物産の関係が変わる可能性が浮上している。

次ページでは、セブン&アイHDの創業家である伊藤家の資産の詳細や、伊藤家が株式を三井物産に譲渡すると見られる理由、さらに、伊藤家の求心力低下の影響緩和策として浮上している社員への株式の分配に迫る。