森羅万象にツッコミを入れる男・銀シャリ橋本直。ステージの上でどんな怒りも照れもツッコミひとつで笑いに変えられる彼は、日々の生活ではどんなツッコミを入れまくっているのか。今回はホテルに泊まったある日のツッコミぶりを、橋本の初エッセイ『細かいところが気になりすぎて』(新潮社)より一部を抜粋・編集してお送りする。
ホテルに泊まるときの
最初の難関
仕事柄、全国津々浦々でお仕事をさせていただくのでホテルに泊まる機会が多い。5日間くらい家に帰れないなんてことはザラにあって、一体僕は何に家賃を払っているんだろうと切なくなることさえある。そんな家の代わりとも言えるホテルについては、思うところというか、気になるポイントがたくさんある。
最近はどこのホテルも専らカードキーで、しかもカードには部屋番号が記されていないものも多く、ホテルの自分の部屋に着いてすぐに軽い気持ちでコンビニに出かけると大変なことになる。帰ってきた時にほぼ確実に自分の部屋を見失うのだ。
カードキーをフロントで渡された瞬間、部屋番号を覚えようとする強い気持ちが必要だ。番号が、802とか503ならラッキーで、馴染みの深い大阪のFMラジオであり、かの有名なジーンズの型番だからだ。551ときたらもっとラッキー、「蓬莱」の豚まんの匂いまでしてくる。
けれどこれが4桁となるともはやお手上げで、覚える気力も湧かない。自分の誕生日ならそれは奇跡の大ラッキーだが、そんなことに大ラッキーは使いたくない気もする。なので、最近はフロントで渡される部屋番号が書かれている紙か、部屋の扉の外の番号をすぐに写真に撮るようにしている。
古いホテルの場合、テトリスに出てくる一直線の長い棒の、クリスタルバージョンみたいなものに短い鎖で鍵が繋がれていることもあって、懐かしくてほっこりする。
ただカードキーを差し込むがごとく、部屋に入ってこの長い棒ごと縦に差し込むと部屋の照明がオンになる時に、「この鍵でそのスタンスとってくな」と思うこともある。
狭すぎる冷蔵庫に
潜む罠
これは共感してくれる人も多いと思うが、部屋の冷蔵庫がまったく見当たらない時がある。インテリアをウッドテイストで統一し、スマートかつエレガントにしすぎているせいだ。
「冷蔵庫どこやねん!?」と焦りながら、木目調の家具やテレビ台の扉をパタパタと開け、何なら絶対にちがうと分かりつつも引き出しもひっぱって探ると「いや、ここ開くんかい!」と、突如として白い冷蔵庫が顔を出す時は、妙に腹が立ってしまう。「徳川埋蔵金みたいな顔すな!銀行の金庫の隠し扉ぶりやがって」。ツッコミというか悪態が止まらない。