M-1優勝!ウエストランドを「悪口漫才」と呼ぶのはちょっと違う理由写真はイメージです Photo:PIXTA

18日に行われた漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2022」の優勝者となったウエストランド。そのネタが、アイドルやYouTuber、果てはM-1自身まであげつらう内容だったため、ネット上では「悪口漫才」であるとして賛否が分かれた。(フリーライター 鎌田和歌)

※この記事ではウエストランドがM-1グランプリで披露した漫才についてネタバレを含みます。

ネタ順にも恵まれたウエストランド

 改めてM-1グランプリの公式YouTubeで見返してみると、ウエストランドのネタ、特に決勝のネタはやはり大変面白かった。

 多くの人が指摘している通り、勝因の一つはネタ順が彼らにとって好都合だったことだ。ウエストランドは1回戦でのネタ順が10番目、決勝では1番目であったため、視聴者は彼らのネタを2回続けて見ることになった。

 1回戦も決勝も同じ「あるあるクイズ」ネタだった。ボケ担当(立ち位置向かって右)の河本太が「YouTuberにあってタレントにないもの」といったクイズを出し、ツッコミの井口浩之が全力でそのキーワードをディスっていく。

 1回戦のネタを「もう少し見たい」と思っていた視聴者にとって、さらに「悪口」の爆発力のあった決勝ネタはとてもスカッとするものだっただろう。

 1回戦では「恋愛映画」「YouTuber」「路上ミュージシャン」などが「悪口」の対象だったが、決勝では「アイドル」「役者」ときて、さらに「お笑い」や「M-1」までもがその対象にされた。

 散々人さまの「悪口」を言った後、最後にM-1という、芸人にとっての一番の憧れであり、もはや権威の象徴となった存在にまで楯突くところが、このネタの完成度を高めていると感じた。

「M-1にあってR-1にないもの」を「夢」と、R-1グランプリを切って捨てた。R-1グランプリの出演者やそのファンを傷つける言いようではあるが、これは多くの人が実際にそうだと思っていて、それだけに口にしづらい事実である。だから笑ってしまう。

 笑ってしまいつつ、少しの申し訳なさを覚えたところで井口がM-1について「アナザーストーリーがウザい!」と叫ぶ。M-1がすごいからって、ちょっと調子に乗った過剰演出してませんか?という、一部の視聴者が思っていそうなことを代弁しているのだ。権威あるM-1をいったん持ち上げてから落とす――これがあることで、彼らが単に言いやすい相手だけを選んで「悪口」を言っているわけではないとわかる。