米国人が払うチップ額、6年ぶりの低水準にPhoto:The Washington Post/gettyimages

 米国のレストランで客が払うチップの額が、少なくとも過去6年間で最も低くなっている。メニュー価格の値上がりや、これまで求められていなかった場所でチップを催促されることが増えたことに消費者がうんざりしているためだ。

 レストラン向け決済システムを運営するトーストによると、昨年7-9月にフルサービスのレストランで利用者が払ったチップの平均は19.3%に低下し、その後は大きな変化はない。増え続ける請求額に客が不満を募らせる中、材料費と人件費が上昇し、レストランは苦境に陥っている。

 この6年で米国の着席型のレストランで客が払ったチップが最も高かったのは2021年初めの19.9%だった。当時は新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が緩和され、感謝の気持ちを表す人が多かった。

 人々は外食にますますいら立ちを募らせている。多くの人がここ数年のメニュー価格の急激な値上がりにたじろぎ、外食の頻度を減らし、外食するときも注文を減らしている。一部のレストランは請求額に強制的なチップやサービス料を上乗せし、請求額はさらに膨らみ、その結果、チップを減らす客もいる。

「人々は2杯目、3杯目を頼む代わりに帰宅する」。レストラン「フーターズ」を運営するシカゴのHMC・ホスピタリティ・グループの運営ディレクター、アンドレア・ヒル氏はそう話す。「給仕係が1つのテーブルで稼ぐ金額が減っている」

 ワシントンDCの医師ジョン・ライリー氏は自身を気前よくチップを払う人間だと考えているが、メニューの価格が値上がりし、限界に達しつつある。「ワシントンではレストランはもうかっていない。間違いなく価格が大いに関係している」とライリー氏は話した。

 レストラン向けのテクノロジーを手がけるポップメニューが昨秋、消費者1000人を対象に実施した調査によると、昨年、レストランの給仕係に20%以上のチップを払ったと回答した人は約38%で、2021年の56%から低下した。同社によると、客はこれまで以上に予算を気にしているという。