ユニクロ柳井氏が激怒したワケ

「すぐに店長を呼べ。クビだ!」ユニクロ柳井正がブチギレた緊迫現場「抜き打ちチェック」がしんど過ぎて涙目になるAFP=JIJI

 抽象的な関係ではモニタリングが効果的であるが、個人的な関係では信頼が損なわれることで逆効果になる場合が多い。部下の働きぶりをチェックする際には、働く人との関係性や状況に合わせた適切な方法を選ぶことが重要である。特に、信頼が大切な関係では慎重に対応する必要がある。

 論文を踏まえて、冒頭の横田氏の著作に戻ろう。冒頭に引用した部分を少しだけ詳しく引用してみる(詳細は同書を読んでほしい。ユニクロ経営の実際が非常によくわかる良書である)。

《店舗数が増えれば、柳井自身が、全店舗を見てまわることはできなくなる。そこで生み出されたのが、〈内部監査〉というチェックシステムだ。本社からの監査員が毎週、抜き打ちで店舗をまわり、店舗の写真や金銭管理の帳面などをつぶさに写真に撮って本社に送ることを指す》

《数年前までは、柳井がこの内部監査の会議に立ち会い、棚の陳列が荒れていたり、掃除が行き届いていなかったりすると、「すぐに店長を呼べ。クビだ!」と大声を上げることも少なくなかったという》
(横田増生著『ユニクロ帝国の光と影』)

 柳井氏のチェックは、先ほどの論文で効果をあげている「個人的な感情が関わりにくい」ものであることがわかる。現場はしんどい思いをしながらも、監査の効果を上げていることが推察される。

 上司が部下の働きぶりを評価する際は、個人的な感情や信頼関係が入り、かえって生産性を下げてしまう可能性がある。何らかの数値目標や外部の客観的な視点を評価に取り入れる必要がありそうだ。